ラグビー部リレー日記

Memento Mori

投稿日時:2020/08/23(日) 12:47

勉強も部活も一生懸命で、真面目で頑張り屋さんのゆきちゃんからバトンを受け取りました、2年プレイヤーの國枝です。彼女を見て背筋が伸びる思いがするのはきっと僕だけではないはずです。僕も、彼女のように、図書館が似合う大人な大学生になりたいなと密かに思っています。

人間万事塞翁が馬。
コロナウイルスの蔓延は私たち大学生のキャンパスライフを綺麗さっぱり奪い去ってしまった訳であるが、長い自粛生活の中にも新たな出会い、発見があった。
読書やラジオを楽しむ習慣が戻ったのは小学生の時以来であったし、余りある時間を使って新しいアーティストを開拓することもできた。
中でも、ロックバンド andymori との出会いは『革命』的であった。
andymori は2007年の結成から、2014年の解散までの約7年間を『すごい速さ』で駆け抜けた3人組のロックバンドである。
彼らの音楽はとにかく自由で、(僕は全く楽器が引けないが)思わずギターをかき鳴らしてしまいたくなるような衝動的で勢いのある曲もあれば、どこか郷愁を感じさせるような美しい曲まで、実に多彩な音楽を奏でる。この素晴らしいバンドを紹介してくれた同期の三方君には本当に感謝している。
ところで、このandymoriという特徴的なバンド名はどこから来ているのか。
調べてみたところ、どうやら、ポップアーティスト、そしてロックバンドのプロデューサーとしても有名なAndy Warholのandyと、作家・写真家として活躍する藤原新也の作品『メメント・モリ』(Memento Mori)のmoriを掛け合わせてandymoriという言葉を作ったようである。

Memento Moriとは、ラテン語で、「死を想え」という意味の言葉である。Memento≒Memory Mori≒Mortal であるようなので、もう少し正確にいえば、「自分がいつか必ず死ぬということを覚えておけ」といったところだろうか。

“Remembering that I'll be dead soon is the most important tool I've ever encountered to help me make the big choices in life. Because almost everything — all external expectations, all pride, all fear of embarrassment or failure  these things just fall away in the face of death, leaving only what is truly important. Remembering that you are going to die is the best way I know to avoid the trap of thinking you have something to lose.”

高校2年生の時、英語の先生が、授業の題材として、スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学でのスピーチを取り上げたことがあった。高校時代、学業的には非常に不真面目な生徒だった僕も、その授業のことは強く印象に残っている。
ジョブズのスピーチの死に関する部分を一言でまとめるならば、まさに、Memento Moriである。自分がいつか必ず死ぬということを忘れるな。そうすることで、下らない自尊心や恥ずかしいといった一時の感情に囚われず、本当に自分にとって大切なことを見極めることができる。というメッセージである。Memento Mori に対する前向きな捉え方とも言えるかもしれない。

僕は今、東大ラグビー部でラグビーをしている。
入部してからの約1年間、それなりに努力はしてきた。
体重は10キロ以上増えたし、ウエイトの重量も順調に伸びた。未経験者として入部した去年の4月に比べればパスやキックも少しずつではあるが上達してきている。
先輩や同期には「上手くなったね」と褒めてくれる人がいる。

でも、今の僕は、本当に大切なこと、から遠ざかっている。
僕がラグビー部に入ったのは、純粋にラグビーを楽しみたかったから。
そして、今僕がラグビー部にいるのは、対抗戦にプレイヤーとして出場して、最高の瞬間を味わいたいから。
僕は、試合前に、最高にワクワクしたいし、自分・仲間のトライに最高に興奮したいし、勝利の瞬間に最高の喜びを味わいたい。だから、明日死ぬかもしれないのに、今日、ディズニーには行かずに、練習に行くし、カラオケにはいかずにジムに行く。根本には、そういう心持ちの自分がいるべきだ。

でも、今の自分はダメだ。
今の自分は、「対抗戦に出る」自分を全く意識できていない。
なんとなく、この一回の練習を乗り切ること。周りにダメなやつだと思われないようにミスなくプレーすること。そういうことに満足を覚えてしまっている。
その場しのぎ、自己保身、そんな下らないものばかりがインセンティブになってしまっている。
だから、いつも受動的にしか動くことができない。
覚えろと言われたから、サインを覚える。でも「どういう状況でそのサインが有効なのかを分析する」というもっと大事なことは、面倒だから、苦手だから、「とりあえず、今の練習ではやっていなくてもボロが出ないから」という理由で後回しにしてしまう。
未経験者として入部した1年目は、何もわからないことが当たり前で、戦術的な理解不足でミスをしても、先輩や同期は「未経験だから仕方がない」と言ってくれたし、僕もそれに甘えていた。でも、対抗戦の舞台では、ラグビー歴なんて何の言い訳にもならないし、「未経験で始めたわりに上手い」選手と呼ばれることが僕の目標ではない。であるならば、未経験者であるからこそ誰よりも貪欲に知識や戦術を吸収していかなければならないはずだ。それなのに今の僕は、「とりあえずみんなと同じことをやっておけばいいや」「最低限のことだけやっておけばいいや」とどこか逃げ腰のスタンスでいる。

このまま4年間を終えたとしても、多分それなりに満足感、達成感はあるだろうし、「やりきった」「頑張った」とそれなりに自分を肯定することもできるだろう。でも、きっと心のどこかで肯定しきれない自分がいる。そして、そんな自分に対して、「きっと、あれが限界だったんだよ」「次のステージで頑張ればいいじゃないか」と言い聞かせる自分がいるのだろう。

人生は一度きりで、決してやり直しがきかない。ごく当たり前のことなのに、日々の生活に追われていると、いつしかそのことを忘れてしまう。そして、なんとなく、1日を、それなりに充実させることで満足してしまう。
それは自然なことで、必ずしも悪いことではない。常に気張って生きるのは疲れるし、いちいち全てのことに、「これが本当にやりたいことだろうか」なんて考えていたら、何も手につかなくなってしまう。
でも、この4年間は、ラグビー、そして、対抗戦という、理屈を超えた、最高のワクワクと興奮を追いかけることのできるこの4年間くらいは、いつも楽な方へ、自分が傷つかない方へと逃げてしまう怠惰で弱気な自分に打ち勝ってみたい。

先日の練習中の大西さんや深津さんのお話、そして、今回のリレー日記は、自分を見つめ直す良いきっかけとなった。でも、きっと今の感情、情熱は何もしなければ、一週間もしないうちに消えてしまうだろうし、またいつもの弱い自分が顔を出すだろう。いつもそうやって口先だけで、結局、何も変わらないということを繰り返してきた。
だから、今日からは、具体的に行動・態度を変えていくだけでなく、毎日、少しだけでも、Memento Mori という言葉と向き合う時間を作ろうと思う。

次は、新入生の橋野にバトンを渡したいと思います。彼はパスが上手なだけでなく、50m走、6秒台前半の俊足の持ち主で、活躍が非常に楽しみな選手です。性格もとても真面目で、精神的にもチームに良い影響を与えてくれるのではないかと大きな期待を寄せています。
 

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