ラグビー部リレー日記

見えない何かに動かされて

投稿日時:2021/01/15(金) 19:00

部内ダントツの「何でも屋」のたからからバトンを受け取りました、スタッフの木下です。倉上からの紹介文にあった「職人技」は運動神経や頭脳にとどまらず、彼の「修復技術」は私が出会った人の中で随一です。スパイクや自転車、部の備品などなんでも直していた印象があります。
「その節」とは1年生の頃真夏の外でのすれ違いざまにマクローリン展開がわからないと騒いでいたら、試験前にも関わらず丁寧に教えてくれた時のことでしょうか。その節は大変助かりました、ありがとうございます。




たくさんの観客に見守られ、ノーサイド間近のトライに大歓声が上がる。
グラウンドに立つ15人とベンチの選手やスタッフだけでなく、逆サイドにいる観客全員が歓喜に満ち溢れる。

 

この光景が見たかった。最後の年に実現させたかった。


 
言うまでもなく2020年度シーズン、最初の1ヶ月を除きいつでも真っ先に出てきた懸念点は感染症対策だった。
今まで当たり前にできていた試合にも開催のハードルがあり、観客を入れるなんてもってのほかだった。


2018年2月、2年生として新シーズンが始まり、私はやりたいと思っていたことの1つである広報活動を始めることになった。それまで最低限の報告のみがスタッフの業務としてあったが、ファンを集めるため、たくさんの人に応援してもらうべく動き出した。日常の更新だけでなく、新歓活動にもこだわりを持ち、数年使い続けていた立て看板を刷新、駒場祭での集客のためにビラづくりを行なったり、SNSのビジュアル化を試みたりして様々なコンテンツを作成した。その効果はすぐに数値で表れ、試したことが結果で返ってくることにものすごくワクワクした。


2019年秋、私たちが翌年の最上級生として部の組織全体を作るにあたり「広報セクション」をきちんと確立した。それまで2年間ワンオペで主導してきた広報活動も、ついに人を集めてセクションとして活動するようになった。一人ですることには限界があるけれど融通が効きやすく思いつきが反映しやすい分楽である。組織化したことでできることも増えたがどうしていいのか戸惑うことも多かった。
12月冷え込んだ部室で初めての広報セクションMTGを行い、観客動員数を伸ばすことを目標に、そのためのイベントやグッズ作成、SNSの更新などの戦略を立てた。



広報は部にとって「最悪なくてもいい」
マネジメントは部の基礎部分だしコアチーム(戦術、分析、練習)は言わずもがな必要である。メディカルもS&Cもラグビーを行うには不可欠だし、チームビルディングは組織をまとめるには避けては通れない。

だが、広報はしなくてもラグビーはできる。試合にも出れる。勝つこともできる。それでも、もっともっとやりたかった。
私たちの部の活動を、世の中に知ってもらって応援してもらいたいという思いがあった。


そんな思いに共感してセクションにコミットしてくれた後輩達の活躍ぶりは輝かしかった。
私がずっと口だけだったグッズ作りと販売、HPの改良、外部向けイベントの企画、OB会への広報、動画編集。
今まで見えなかった世界が見えて、嬉しかった。


自粛期間に入ると、むしろオンラインの広報の重要性が上がった。部を上げてyoutubeチャンネルを作り、セクションに関係なく部全体でSNSの広報に全員が何らかの形で関わった。練習ができないことは悔しかったけれど、新しい可能性にワクワクした。


2020年10月、対抗戦を目前にモチベーションムービーを作ることにした。その参考にすべく、これまでのPVを見返していた。


見返して、悲しくなって、悔しくて、涙が止まらなかった。


そこで見たものはトライの瞬間、一斉に上がる歓喜の声、グラウンドの一体感。
私が広報活動を行った2年間で観客は確実に増えていた自覚はあった。最後の年、どんなにたくさんの人に足を運んでもらえるか、後輩が作ってくれたグッズの緑色で観客席がいっぱいになるのかを見るのを楽しみにしてセクションを幕開けした10ヶ月前を思い出した。グラウンドで全員が沸き立つ瞬間が見たくて広報を始め、続けていたことを思い出した。

今年、この光景は見られない。試合ができるだけでもありがたい。頭ではわかっていても、でも観客を入れた試合がしたかった。OBが口々に現役に檄を飛ばす様子、親御さんの歓声、通りかかった小さい子が目を輝かせて試合を見ている姿、陰から見ている部員の彼女。
老若男女問わず、ルールも複雑なラグビーに見入って、声をあげて応援している様子が見たかった。


それでもできることは行った。オンラインの中継の宣伝も行い、実際試合を追うごとにより多くの人が見てくれていることが実感できた。


当初設定した目標は早々に実現不可能であることがわかった。私に東大ラグビー部員としての来年はない。
これまで、最後の年の歓声を聞くのが楽しみで頑張ってきたけれど、その光景はもう見ることができない。
それでもラグビー部のファンがどうやったら増えるのか、考え続けた。
目標を失っても頑張ることができる理由は何か、


私にとってそれは「東大ラグビー部」の一員としてのプライドや使命感だったのかもしれない。


広報以外の活動にも言える。
寒い夜に氷を作り、練習から離れて漏れた灯油をふき続け、無限に出てくるゴムチップを掃除する。
どれも「なんでそんなこと」思われるかもしれないが、やらなきゃいけないと思うのは東大ラグビー部をよくしていきたいという使命感だったのだろう。

私だけじゃない。入替戦出場という目標を失っても来る対抗戦に本気で臨み、京都大学戦があるかわからなくても年末年始に分析のビデオ集めに奔走し、トレーニングを行う。
東大ラグビー部の一員であるという自覚が、私たちをUpdateさせてくれてたのではないか。


少なくとも私は、恥ずかしながらこの意識が芽生えたのは4年生になってからだった。3年生までは自分がこれをした、自分のおかげで成果が残せたという自己肯定感を探してでしか生きていなかった。そんな私でも、目の前のことに必死で食らいついてできることを探し続けたことで東大ラグビー部としての使命感やプライドでここまで動けるようになった。
だから、今年観客が入らなくても、今年こうやってコツコツファンを集めて、来年以降に繋がれば万々歳だと思えてここまで進むことができた。


今年、シーズン終了決定から最終日までは丸1日しかなかった。正直どういう気持ちでいればいいのかわからなかったけれど最後に広報の後輩たちが主導して作ってくれた17分にわたる超大作のビデオを見て、4年間やってきたことが報われたような気がした。今年の数々の思い出深い試合映像、そして4年生の保護者の皆さんからのメッセージ。グラウンドでは見られなくても、最後にこうして1番身近で応援してくれている人たちの姿を見せてもらえた。私が秋に感じた悔しさは違う形で晴らされて、笑顔で卒部することができた。本当にありがとう。
こんな頼もしい後輩たちが、ラグビー部が、来年以降、ここからさらにどんなに発展していくのかを見るのを楽しみにしています。



そして、どうしても書きたかったスタッフに関しても一言書かせてください。
3人の4年生と8人の2年生、総勢11人と私の入部以来、そして今年のパートの中でも1番の大きな組織になった。
人数が多くてもスタッフは一人一人、埋もれることなく、東大ラグビー部のスタッフとして誇れる個性を持っている。
完璧に物事をこなし得たあつい信頼、1つ1つの仕事にこだわりを持ってできる熱意、勉強熱心で一人一人に寄り添った対応、黙々と先回りできる気配り高いリサーチ力と行動力、細かい仕事の正確さ、明るいながらも切り替えた時に発揮するリーダーシップ、強い責任感を持った人望の厚さ、流す情報への感度の高さ、新しくやりたいことを自ら貫く力、隠れて泥臭く努力できる力。
私は適当で楽観的で、至らない点も多かったかもしれないけれどこの11人のスタッフ組織のスタッフ長をできたことを心から誇りに思います。

来年以降、不安に思うことなく、もっともっとUpdateし続けて部を引っ張るスタッフ組織を期待しています。


 

私はこの4年間ラグビー部で得たことを胸に、引き続き「東大ラグビー部」を卒部した1人としてのプライドを持ち、また新たな場所で新しいプライドと使命感を見つけます。
グラウンドに応援に行ける日を、またそこで勝利の喜びをみんなと感じられる日を楽しみにしています。


 

最後に、
財務関連で細かいところまでお力添えいただいた橋本財務委員長、常に現役の立場になって力になっていただいた執行部会の皆様をはじめOBの皆様
現場で学生に寄り添い鼓舞していただいた青山監督、深津コーチ、大西コーチをはじめ監督コーチ陣の皆様
コロナ禍でもラグビー部の活動を応援いただいた学生支援課、守衛さんはじめ大学関係の皆様
悩んでいた私をラグビー部に強く勧誘し、卒部後も気にかけていただいた先輩方、
私の機嫌の浮き沈みも温かく受け止めて支えてくれた家族、
いつも優しく応援してくれた友人

誇れるチームを一緒に築いたチームメイト、
そしてこのチームを一緒に引っ張っていった同期。

多くの人に支えられ、この4年間を走り切ることができました。
心より感謝申し上げます。ありがとうございました。


 

次は例年とは異なる新歓活動に新歓代表として尽力し、落ち着きと風格を感じさせる存在であるやまけんにバトンを回します。
1年生の頃二郎系ラーメンの帰りにアイスまで食べさせられて(食べさせてもらって)から、財務や就活、授業などでなんだかんだお世話になり(お世話して)感謝しています。

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