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VOICE:2000年

「うそつき」 岩田 厚

俺は入部した時の自己紹介でこう言った。
「目標はテレビに出ることと、早稲田に勝つことです。」

 去年、俺は対抗戦に出た。
そして、チームの足を引っ張った。自分でも信じられないぐらいに引っ張った。 青学戦のあと、胃が痛くて熊谷駅のトイレに入った。外から声がした。
「イワオさんがいればな…。」
これが去年の自分の全てだった。

正直、自分が何のためにチームにいるのかわからなくなっていた。

帝京戦後のミーティングで大芝が言った。
「遊んでるんだったら辞めた方がいいよ。」
死ぬほど腹が立って悔しくて、暗いグラウンドで一人泣いた。 自分がまわりからそんなふうに見えていたなんて思いもしなかった。 本気でラグビー辞めようと思ったのは3年間ではじめてだった。

筑波戦後に高原さんに言われた。
「子安がお前のプレーを見てお前のこと尊敬できるわけ無いだろ。
別所だってなんで俺を出さないんだって思ってるぞ。」

他のメンバーは筑波にいい試合をして波に乗っているようだった。
でもいい試合をしたのは自分じゃない。 自分が出てなかったら勝てたんじゃないかと思った。
「俺のどこに高原さんたちの4年間をぶちこわす権利があるんだ?」
気が狂いそうだった。

俺は去年のシーズンを通してたったの一度も誉められたことはない。
たったの一度もチームの信頼を受けたことは無い。
試合が終わるたびにお前が悪いと言われた。
あれだけ練習したスローもうまく行かなかった。
だれも俺をAのプレーヤーだとは思っていない。
自分でも自分がAだとは思えない。
「おまえさえいなければ。」
そういう目で周りが自分のことを見ているような気がした。 練習のたびにおまえは使えないと言われ、 どうやって自分に自信を持てばいいのかわからなかった。
試合で手を抜いてるつもりなんて全く無い。
他の奴より気持ちを抜いてるつもりなんて毛頭無い。
でもうまくいかなかった。

そんな中で俺はAの人間として試合に出続けた。
そして青学戦でみんなの努力を、4年生の4年間をふいにしてしまった。

Voiceを頼まれてなんでこんなみっともない文を書いたかというと、 これを今年、対抗戦に初めて出るかもしれない人に読んでもらいたかったから。
去年の俺がダメだったのは対抗戦というものに対して積み重ねてきたものが無かったから。
練習は一生懸命やったけど、それは練習に対して一生懸命だっただけだから。
本当の意味でそれに気付いたのが対抗戦で全敗して4年になってからだから。
でも、その代償はあまりにも大きすぎた。
俺が犯した過ちを繰り返してほしくない。
俺みたいな惨めな思いをしてほしくない。
でも今のままではきっと繰り返してしまう。
この過ちの意味をみんながわかってくれなければ、
結局のところ今年も勝つことはできないと思う。
だからわかってほしい。

卒業した4年生はそれでもこんな俺に「がんばれよ。」と声をかけてくれます。
見ててください。
俺がただのうそつきで終わらないためのチャンスはあと1回しかないから。