VOICE:2018年
  Face」   副将 宮原健
 


「東大ラグビー部って強いの?」  

 友人、知人にこう聞かれることが多々ある。その度俺は曖昧な返答をする。満足な戦績は残せていないが、弱いと断言するにはプライドが邪魔をするから。3年間、必死にラグビーに取り組んできた自負はある。そう簡単に弱いなどと認めたくない。自己否定につながりそうで怖いから。

 

 しかし今、俺たちは弱いという現実を正面から受け止めなくてはならない。

 

 決して悲観している訳ではない。弱さを認めることで進むべき道が示される。立てた目標を成し遂げるには弱くてはいけない。強くならなくてはならない。そのためには甘さを許してはならない。

 

 自ら目標を定め、最大限努力し、成し遂げることができたなら、その喜びは格別だ。自己実現は、人間の最も高度な営みである。東大生は大学入試で目標に向かって努力を重ねて達成することの喜びを経験している。今年、俺たちはラグビーでそれをやるのだ。そのために、弱さと向き合う必要がある。

 

 過去の弱さと向き合う。

 シーズン始動に向けてラグビーの勉強をしてきたが、2年間スイカを着て試合に出てきた自分が基本的な原理原則すらわかっていないことに戦慄した。ウエイトトレーニングやランの数値から見るに、東大ラグビー部のフィジカルはまだ大学生レベルに達していないことが判明した。新年初練習でタッチフットをした際は、簡単な落球やパスミスが散見され目も当てられないよう状態だった。これが現状だ。

 チームとしてラグビー理解度を高めるために皆で勉強する。過酷なウエイトトレーニングに食らいつき、顔を歪ませながら走り込み、確かなフィジカルを手に入れる。試合でのパフォーマンスにつながる練習を考え、全力で取り組む。勝つための明確な戦術を持って試合に臨む。こうやって一つ一つ課題を克服し、過去の弱さを超えていく。

 

 仲間と自分の弱さに向き合う。

 最初から最後まで一切気を緩めずに努力し続けることができる人などそういない。どこかで甘えが出てしまう人がほとんどだ。過去3年間の自分を振り返っても、そういったことは多々あったように思う。あと一秒、あと一回、頑張れるはずなのに、そこを妥協してしまう。しかし、その甘えが目標達成を遠ざける。今年、副将として、リーダーとして、甘えが出てしまう仲間がいたら、厳しく指摘していく。練習中や試合中だけでなく、グラウンド外の行動でもだ。細かいところにこだわれない甘いチームは強くなれないと信じている。仲間に指摘していく一方で、自分の甘さに最も厳しくあり続け、俺はリーダーにふさわしい人間に成長していく。

 

 とはいえ、弱さと向き合うことはきっと予想する以上に難しいはずだ。一年間、その痛みに耐えながら、全員で少しずつ強くなっていこう。そして、目標を達成して、最高の喜びを味わい、胸を張って「東大ラグビー部は強いよ。」と言ってやろう。

 

 そのとき、俺たちはどんな顔をしているだろうか。

 

 

2018年2月27日
東京大学運動会ラグビー部副将
宮原健