VOICE:2000年

合宿日記 深津 晋一郎

08/09 合宿初日


今日から合宿が始まる。今年の合宿はやることがいっぱいあるので、1日1日を大切にしていきたいと思う。
初日から山学大と合同練があった。午後のADで、チームのいいところをどんどん出していく中、自分はノックオン、ディフェンスなど、散々だった。
明日にかけるしかない!
始まりは、いつも雨だ。

 


08/10 合宿2日目


今日の午前練は合わせ主体で、軽めの内容だった。というのも、今日の午後は合宿緒戦、vs山学大が組まれているのだ。
2:00p.m.。ゲームの開始を告げる笛が鳴る。
試合開始直後から、東大ペースでゲームは進み、チーム全体が前へと出ていく。トライの連取で勢いづくと、そのまま前半を折り返す。
しかし、後半になると状況は一変する。受けのディフェンスになりだし、次々にトライを奪われる。結局、ゲームには勝利したものの、満足のいく内容とは言えないものだった。

個人的には、トライは取れたものの、ディフェンス、ボディコントロール、コミュミケーションミスなど、課題は多く見えた。
チームも同じで、良さと悪さがともに浮き彫りにされたゲームだったように思う。
明日、練習中から意識して、そこを調整していくことが必要だ。

P.S. 河本裕史撮影のビデオは鉄柱をズームで映し出していた。

 


08/11 合宿3日目


今日は藤本君のことについて書こうと思う。
彼は山梨学院大のBKリーダーで、ポジションはCTB。この3日間、ADでは常に僕の対面だった。
この3日間、彼のマークにつくことで得たものは、かなり多い。正直に言って、3日間通じて、僕は彼に抜かれまくった。何度も同じ形で、カットインを決められ、ゲインを切られた。カットインしてくる、それは分かっているはずなのに、ステップワークに振られ、タックルを決められなかった。
昨日のゲームでもそうだ。SOがボールをもつと同時に彼は「外が空いてる!」と叫び、カットアウトした。それに反応しようと外に意識を向けた次の瞬間、彼はカットインして僕の内側を抜いていったのだ。
彼は強いだけでなく、切れがあった。3日間、マークについたことは、僕にとってすごく刺激になったし、とにかく必死だった。

今日のADで、1本だけだったけど、初めて肩の感触に残るヒットができた。それが今日いちばんの収穫かもしれない。
意地と、責任。


08/12 合宿4日目

今日はオフ前最後の一日。vs学士戦だ。
12時30分過ぎにグランドに出たときに思ったけど、毎年ながら学士はむかつく。「こんな奴等には絶対に負けない」って思う。そしてすぐに、「敵のことなんて関係ない」と考える。要は、自分のプレーをするだけ。自分のプレーができるか、それが全てだ。 ゲームは結局、大差で勝利した。でも、やっぱりミスが多かった。トライにつながる場面で、絶対にミスが許されない場面で、僕はパスミスをした。たぶんそこに、今の自分の弱さが象徴されているんだと思う。
 明日はゆっくり休みます。


08/13 合宿5日目

オフ。骨休めしながら、思索にふける。
クローン技術の何が問題だというのか。
各種メディアは騒ぎ立てる。「クローン人間を作ることには倫理上の問題があると。でも、そこでまことしやかに言われる「倫理」というものが、ぼくにはつかめない。
第一に、クローン人間といっても、単にDNAの組成が同一であるだけで、決して「同一の」人間ではない。ここに倫理上の問題があるというのなら、一卵性双生児はどうなるというのか。
第二に、優勢思想と結びついて差別を生む、という論理がある。しかし、ここで問われているのは技術の健全な運用であり、クローン技術自体の倫理性は、この論理において問われていない。僕が問うのは、「クローン技術それ自体が悪か?」ということだ
そんなことを、時に思う。
温泉は、心地よかったです。

 


08/14 合宿6日目


今日は走った。とにかくひたすらに、走った。
それで一日は終わった。
その先に、何があるのか。

 


08/15 合宿7日目


守るべきものとは、一体何なのだろう。
今日、善通寺(自衛隊)との合同練があった。彼らは国を守る(凹によると主義主張も守る)。とにかく、守るべきものはあるのだ。
そういえば、Mr.Childrenも歌っていた。「守るべきものは君なんだよ」と。ぼくにとって、守るべきものとは一体何なのだろう。
・・・・・・シーズン初日にみんなに言ったことくらいは、守ってみたいと思う今日この頃です。

 


08/16 合宿8日目


昨日に引き続き、善通寺との合同練。正直に言ってスキル&フィットネスが終わったときには、僕は「もう彼らと一緒にやりたくない」と思った。考え方に著しいギャップがある中での練習、周囲が期待通りに動いてくれない状況というのは、とても気分のいいものではなかった。
午後。D-1で、僕は2回、同じ判断ミスをした。外にパスを放れば即トライになる状況で、パスを放すことができなかった。水上さんは「今日は厄日か?」と言ったが、それは運のせいでもなんでもなく、ただ、下手くそなだけだった。

明日、山中湖での最終ゲーム。
東大というチームが本物になれるかどうかの試金石。
水上さんは、そう言っていた。

 


08/18 合宿10日目


山中湖もいよいよ終わり、僕たちは次の地に向かう。
正直に言って、山中湖が終了したといっても、安堵や開放感のようなものはなかった。写真撮影の時も、バスに乗り込んで山中湖をあとにした時も。
終わりは、始まりだ。
菅平へ。

 


08/19 合宿11日目

 

VS流経大。

勝つには勝ったけど、個人的にミスの多いゲームだった。
僕は3度、ボールを落とした。
相手が弱かったからよかったけど、これが対抗戦だったら取り返しはつかない。
善通寺とのゲームで、痛いほど分かったはずだった。
藤井がゴール前まで持っていったボールを僕がピックミスし、その1つのミスからチームは流れを失っていった。
ひとつひとつのプレーが、いかに大きいか。
ミスをしないこと。ひとつひとつのプレーを確実にこなすこと。
そういう土台がないところに、Confidenceはないんだと、思う。

 


08/20 合宿12日目


1日を通じて、軽めの練習。
チームの形を確認するために、ゆっくりと、それでも意識はゆるめずに、体を動かす。
そして明日、合宿最終戦。VS東北福祉大。
ひとつひとつのプレーに魂を込めて、ベストゲームをしたい。
9月9日に、つなげる。


合宿最終日


対抗戦に向けて、チームの実力を試すことができる最後のゲーム。
vs東北福祉大。
今までのゲームとは、やっぱり違った。
FWは劣勢に立ち、いつもの出足がなく、BKは大きく展開してくる敵ラインにとまどう。攻撃においても、持ち込んだボールをきれいに出すことができない。メイクラインは遅く、個人の素早い判断が出てこない。
そして、ゲームに負けた。
試合後に、大芝が言った。宋も、新さんも言った。ぼくも思う。
今のままでは、対抗戦には勝てない。
厳しい状況。追いつめられた精神状態。そういうなかで対抗戦は戦わなければならない。今日のような状況をもっと厳しくしていったようなところで、ゲームは進む。
残された時間はあと3週間。

そして、合宿は終わった。
今年の合宿ほどいろんなことを思い、悩み、考えた合宿はなかったように思う。
自分なりの気持ち。
そういうものを、機会あって、吐き出した。
ぼくなんて下手くそだけど、センスもないけど、でも負けるのはいやだ。
とにかく、負けるのはいやだ