VOICE:1999年

「青学戦の感想」 平田 圭

 青学戦。他のこと書きゃいいのに、やっぱり青学戦。青学戦のこと思い出すと、 ブルーになるの分かってるのに。ってこれシャレじゃないよ。ウフフ。
 そう、青学戦。思えば、春シーズン終了後の2年会。おれが青学戦を強く意識す るようになったのは、あの時からだったと思う。そのころ、部の雰囲気は最悪だった。そして、2年(おれらの学年)のうち、何人か が部をやめることになり、それをみんなに伝えるために、その2年会は開かれたの だ。ちとせ会館の地下1階で涙を流しながら語り合っている男男しい集団を、周り の客たちは「きもっ」と思いながら見ていたかもしれないが、おれたちは真剣だっ た。

 おれは、「けっこうみんななえてて、やめたがってる。」っていうのを聞いてい たけど、正直な話、本当にやめるとは思ってなかったから、その日、ちゃんと話を 聞いて驚いた。「やめんな」って説得したけど、やめる理由とか聞いてるうちに、 あることに気づいた。「こいつら絶対おれよりもラグビーやラグビー部について考 えてる。」そう思った。おれは高校に入学したてのころ、同じ中学の友達(マサ) と一緒に行動しているうちに、ついついラグビー部に入ってしまい、大学でも高校 のラグビー部の先輩がいて、その友達の関西人もやさしくしたくれたからなんとな く入部した。

 そんなこんなでラグビーを続けることになって、だんだんラグビーが うまくなっていくのが自分でも分かるようになって・・・でも、それだけで満足し ていた。1年のとき対抗戦でリザーブに入ったけど、正直言って「オーシバさんけ がすんなよー」ってずっと思ってたし、2年になってから一本目になって、ちょっ とはチームのことを考えるようになったけど、まだまだ自分がうまくなれればいい と思ってた。だからこそ、やめるやつらの言葉が身にしみた。酔っ払いながら、「 なんでおれラグビーやってんだろ」って考えた。その時、考えもまとまらないうち に出た言葉が、「おれは対抗戦で青学に勝ちたいから今年ラグビーする」だった。 このとき、大学でラグビーをやっていて、初めて目標ができた。

 合宿以後の練習は、とても充実していた。自分自身もチームに溶け込み、個性を 発揮することができるようになり、チーム自体もまとまっていった。そして、対抗 戦初戦の日体戦で接戦ができ、いけるんじゃないかなって思った。でも、現実は厳 しかった。慶應・早稲田・帝京・明治には大差で負けた。筑波にも、前半こそ勝っ ていたが、終わってみれば、30点以上差がついていた。結果だけ見れば「いつも と同じ」だったけど、自分としては、青学に勝つ自信はあった。

 そして、青学戦だ。この試合だけは、どんなにトライを取られても、「絶対に取 り返せる」と思ってた。っていうか信じていた。最後のトライを取られたときも、 すぐ逆転できると思っていた。が、結局1点差で負けた。おれはこの試合でプレー スキッカーだったけど、決めるべきところで決められず、自分の責任を果たせなか った。今でも、思い出すたびに悔しくなる。

 ・・・・・試合が終わって、何人かで飲んだ。そのとき藤井が、「今日高原さん レセプションで、『来年は後輩たちがきっと青学に勝ってくれると思います』って 言ってたよな。あんなこと言ってもさぁー負け犬みたいでほんっっとにかっこ悪い んだけどさぁー・・・勝たせてやりたかったな。」とつぶやいた。「そうだな・・ ・」その日のおれは、いつも以上に酔いが早かった。