VOICE:2001年

「Jrコーチということ」   小林 理


 涼月の候、蜻蛉が山からおりてまいりましたが、みなさんいかがお過ごしですか?ご存知でない方もいるかと思いますが、東大ラグビー部には確か10年以上も続くというJrコーチという制度があるのですが、今年のJrコーチを代表してこのことについて書いていきます。


 まず、Jrコーチというものは何かというと、簡単に言えば一年生のコーチです。東大ラグビー部に入ってくる一年生はそのほとんどが素人同然といえます。ラグビー経験者といっても強豪校出身者はごくわすかで、一部リーグに属する他チームの一年生と比べれば素人といっても過言ではありません。新入部員にラグビー未経験者が多いのも東大ラグビー部の特色といえます。このような一年生達が上級生の練習に入部してすぐに混ざるのは厳しいため、はじめのうちは一年生だけ別に基礎的な練習をするのですが、それを指導するのがJrコーチなのです。Jrコーチをするのは、4年間ラグビー部でプレーをしてきてラグビー部を引退したあと、5年目に大学院や留年などで大学に残る人の役目ということになっています。今年の場合は自分をはじめ約8人でJrコーチという組織をやっています。


 ところで、入部して一年生だけの練習というと、早稲田の一年生練を連想する人もいるかもしれませんが、東大の場合それとはまったく違う取り組み方をしています。一年生が入学してくる4月中は勧誘の時期で、毎年、とにかくラグビーというスポーツの面白さを知ってもらいラグビー部に入部してもらうための練習を考えています。そして一年生が入部を決める5月からは、その年のJrコーチによって方針が異なってきます。東大ラグビー部では、その後の4年間のチーム状況を決めるのはJrコーチにかかっていると言ってもいいほど一年生に対するJrコーチの責任は大きなものなのです。今年の場合は、まずは基本プレーと体作りを重視しJr練習をスタートさせました。その後チーム全体の人数の関係から、基本プレーと並行して実戦練習も増やしていきました。


 今年は例年と異なり上級生が25人足らずという状況でJrにとってはかなり恵まれていたとおもいます。まず、経験者の中で基本が大体出来ている一年生を上級生に混ぜて練習させてあげられたことがあります。もう一つは、一年生を合わせてやっとBチームが組める状況だったので一年生全員が試合を経験することができました。特に全員を試合に出せたことは、一年生のモチベーションの維持するためにも大変幸運だったと思います。そして試合のたびに次第に東大ラグビー部のBチームとしてのメンタル的な強さを身に付けていくことが出来たと思います。


 自分たちJrコーチは、東大ラグビー部に入ってくる新入生に対する指導については自分たちが一番適していると自負してやっています。それは4年前に自分たちも素人同然でラグビー部に入部してきたからで、一年のとき基本的なプレーをどうやって身に付けたとか、東大のラグビーをどうやって身に付けていったとか、そういったところがわかっているから毎年Jrコーチが一年生に教えていくことでうまくいっているのだと思います。今とは練習内容などはかなり違いますが、自分が一年生のときもJrコーチに教えてもらいました。その後の自分のラグビーにはその時のJrコーチの影響は少なからずあるわけで、当時はいろいろ不満をもらしていましたが、いまでは感謝しています。自分たちが4年生であった昨年は対抗戦で初勝利を挙げましたが、その要因の一部として自分たちが一年の時のJr練でしっかり基礎を教えてもらったことがあると思います。そういう意味でこうしたJrコーチという制度は東大ラグビー部にとって重要な制度です。


 ただ自分の意見として、Jrコーチは一年生に一から十まで教えることは出来ません。飛行機にたとえれば、自分たちに出来るのはせいぜい離陸を手伝うくらいです。今年の場合も、だんだん一年生は自分たちの手を離れて成長してきています。この時期からのJrコーチの役割は自分たちで成長をしていく一年生と苦労を共にしながら影から支えてあげることだと思います。いますぐ結果はでないかもしれません。でもJrのみんなの数年後の活躍を願って、短い間ですが一緒に努力をしていってほしいです。


 自分はこれまでJrコーチをさせてもらったことについて大変感謝しています。一年生にラグビーの基本から教えることで、自分も勉強をすることができラグビーを改めて基礎からやり直すことができました。また一緒に練習や試合をすることで一年生の気持ちがよくわかり、その気持ちのおかげで自分のラグビーのプレーをいい方向に変えることができたと思います。


 来期以降もJrコーチ制度は続くことと思いますが、これから卒部していくみんなは自分たちが4年間で学んだことを伝えていくためにも義として、責任をもって一年生を育てていって欲しいのです。これからチームとして育っていくかどうかは今後のJrコーチにかかっていると思います。