VOICE:2002年

「ぶっちゃけてみると」  宮地浩輔


 3年目の夏合宿の練習中、何日目だったか僕は宋さんに蹴られた。スクラム練で覇気がなかったからだ。宋さんは僕にむかついたのだろう。僕も正直に言うとむかついたから、がむしゃらにやってみた。うまくいった。FWになって1年目でとまどっているよりも、考え込むよりも、がむしゃらにやるほうがいいと気づいた。気づかされた。4年目になって僕はこういうふうに気付かせる人間になれていない。そうなるためにはまだまだ殻を破らなければならない。

 

 殻を破ること。何年も前からやりたかったことだ。僕は高校からラグビーを始めた。それまで私生活でなあなあだった自分に終止符を打ちたかった。普段はなあなあでやさ男でも必要なときは目の色を変えて強くなることができる。そんな人間はかっこいいと思う。


 去年の冬に2人の先輩から「おまえは人間が弱い」といわれた。違ったことに関してそう言われたのだが、しかしそれは両方とも自分がまだなあなあの気持ちを残しているということだった。そしてそれを忠実に反映して3年目の対抗戦のシーズンは半端なものになっていた。合宿を乗り切ったことだけに満足し、それを自信に変えていた。やってきた早稲田戦、明治戦は最悪だった。もともと確固とした激しい感情に裏打ちされていない満足、自信なんか崩れるのは早い。タックルにはいれない。  まだ殻を破れていない。

 

 責任、自信、開き直り、がむしゃら、実力、・・・・。いろいろ先輩から教えてもらった。気付かされた。その時の先輩はかっこよかった。殻を破り、そういう人間になりたい。なりたくてたまらない。もう(たぶん)最後の夏合宿がやってくる。4年は1度しかやってこない、と誰かが言っていた。ほんとにそうだ。もう時間がない。今度こそ俺は殻を破り、すべてにぶちかます。たぶんそうすることが勝つことにもつながるし、それが全ての人に対する恩返しになると思う。