VOICE:2022年
  「信じることから始めよう」主将 國枝健
 
3年前の新歓練習で、初めてラグビーをした時のあのワクワク感は今でも忘れられない。
ボールを持って思いっきり走る。なんて気持ちのいいスポーツなのだろう、と思った。

あれから3年経ったけれど、やっぱりプレイヤーとしての自分の根底には、あの時と同じ気持ちがあると思う。
ただ、この3年間で、ラグビーは楽しいことばかりではないことを知った。

ラグビーの試合では、常に相手と身体を当て続けながら、縦100m、横70mのグラウンドを80分間走り続けなければならない。身体の大きさ、強さ、体力、走力、キックやパスなどのスキル、そして何事にも動じないメンタル。全てを鍛え上げなければ試合で勝つことはできない。だから、練習もハードになる。全身に乳酸が溜まって動けなくなる時もあるし、吐きそうになる程、心肺に負荷がかかる時もある。それから、常に怪我のリスクが潜んでいる。自分自身も何度も怪我に悩まされた。怪我をすると自分の思うようなプレーができなくなるし、DLに入ってプレーができない期間は本当に辛い。
また、グラウンド外でも、常に自己管理を徹底しなければいけない。3時間に一回食事を取らなければいけないし、1日で成人男性の標準の2倍近くのカロリーを取らなくてはいけない。練習に加えてウエイトトレーニングもして、次の日の練習に備えて身体のケアもしなくてはならない。やるべきことは山ほどあって、それらをこなしているとあっという間に1日が終わっている。オフの日も、遊びに行くと疲れるし、体重も減るから、大抵、寝て、ご飯を食べるだけになっている。

それでも今、ラグビーを続けている。というより、むしろ、3年前より、ラグビーが好きだ。
好き、というか、こんなに最高で、特別なスポーツはないと思っている。
日々のハードな練習、食事、トレーニングを乗り越えた先に試合という最高の舞台があり、ピッチに立つ全員が、自分の全存在をかけて、体を張り続ける。問われるのは小手先のテクニックとか、誤魔化しが効くような表面的な上手い下手の部分ではなくて、日々の鍛錬によってのみ培われる、真の体と心の強さである。だからプレーしている選手も観ている観客もあんなに気持ちが熱くなる。だから、心の底からリスペクトできる、信頼できる仲間ができる。だから試合に勝って仲間と抱き合うと自然と涙が溢れてくる。


昨年末、新チームのキャプテンになることが決まった。同期や後輩には、僕より強い選手も上手い選手もいる。それに僕は人間ができているわけでもない。至らないところは腐る程ある。それでもみんなが僕を信じ、選んでくれた。だから、僕も自分を信じることにした。このチームのキャプテンになる決意をした。

僕は、今年、自分と、みんなを信じる。自分とみんなの可能性を信じる。
可能性を信じるからこそ、ハードな練習をする。仲間に厳しい要求をする。
そして、みんなと1つでも多くの試合に勝ちたい。みんなと、入替戦という大きな舞台で最高のラグビーをしたい。今の僕には本当にそれしかない。だから、この1年の全てを、東大ラグビー部に、ラグビーに、みんなに懸ける。できることがあったら何でもする。来年以降のことは何もわからないし、考えられていないけれど、みんなとラグビーができるこの最後の1年は、みんなと一緒にひたむきにがむしゃらに前に進み続けたい。

ラグビーという最高のスポーツに思いっきり挑戦しよう。
そして、絶対に入替戦に出よう。歴史を変えよう。
そのために、今日から、自分を信じよう。仲間を信じよう。

2022年2月7日
東京大学運動会ラグビー部主将
國枝健