VOICE:2024年
  「アスリート」 主将 吉村寿太郎
   
 対抗戦Bに落ちて20年間入替戦に出場できていない東大において、何を変えたら歴史をつくれるのか。毎年、チーム作りに関わる最高学年はそれぞれきっと同じように考えてきただろう。
 東大に入って、運動会に入る意味は何か?競技スポーツをやる意味は何か?ラグビーを選んだのはなぜか?高校生から大学生になって世界は広がってなんでもできるなか、多くのものを犠牲にしてまで、東大ラグビー部に所属することに価値を考えなければいけない。これを明確にしなければチームは強くならないし歴史は変えられない。
 対抗戦Aに所属する人と話をすると、こういったラグビーに対する向き合い方はやはり全く違う。チーム内にプロを目指す人が何人もいるだけで、見ているものが変わってくるのだと思う。ラグビーで飯を食うために、練習するとかトレーニングするとか食事睡眠にこだわるとか、そんなことは当たり前になる。アスリートとしての「ラガーマン」、プロになるものとして、本当に当たり前なのだと思う。
 でも東大は違う。プロに進む人はほぼいない。部活に入っただけで「お勉強だけじゃなくてスポーツも頑張っていて偉いね」と誉められて満足できる。周りの人より真剣にスポーツをして充実感を感じることもできる。でも当然そういった選手は、前述した「ラガーマン」には及ばないだろう。「趣味でラグビーをやる人」にすぎない。ラグビー以外にもやりたいことがあったり、勉強に励んだり、就職活動をしたり、色んなことをバランス良く頑張ろうとする。
 東大が越えなきゃいけない壁はそこにあると思う。未経験も多い、経験者といってもラグビーエリートはほぼいない。そんな中でも、アスリートにならなきゃいけないのではないか。少なくとも志はアスリートでなければならない。プロ選手を本当に輩出するようになったとき東大の位置は確実に違うところにある。
 大学の名前や歴史ばかり背負って、しょうもないプライドや自負があるやつはグラウンドでは通用しない。東大生は分析したり研究したりするのは上手で、言い訳や負けた理由を論理的に説明するのは得意だ。しかしそのレベルから僕は脱却したい。
 純粋にこの競技スポーツとしてのラグビーに魅せられ、純粋に勝利だけを望んで死ぬまで努力する。ただ勝ちたい。魂を震わせてラグビーを楽しみたい。せっかく出会えた仲間と大きな歴史を作りたい。東大ラグビー部に所属する一人一人が常にこの気持ちと、アスリートになる覚悟を持っていれば、目標は十二分に達成されると確信している。
 ラグビーが大好きで、このチームが大好きで、これから始まる今シーズンに僕はワクワクしている。




2024年2月5日
東京大学運動会ラグビー部 主将
吉村寿太郎