僕は2回、中途半端に秋シーズンから復帰させてもらい、6年目もラグビー部にいた。
M1の夏、「夢をつかむチャンスがあるならそれをつかみたい」、と言って復帰させてもらった。 あきらめきれなかった、という気持ちがすごく大きかった。 でも、チャンスをつかむことはできず、対抗戦で勝てなかった。 めっちゃかっこ悪かった。めっちゃくやしかった。
翌年の夏合宿で、僕はOBとして現役部員と試合をし、大敗した。 去年までいっしょにやってた連中が成長していることに頼もしさを感じたと同時に、なにか非常にうらやましく、悔しかったのを覚えている。 東京に帰ってきてから、僕は禁煙をし、筋トレをする頻度が増えた。 そして、岩田が怪我をしたことを聞いた。 見舞いに行った。 悔しくてたまらないはずなのに、岩田は明るく振舞ってた。 なんかこっちも悔しくなってきた。 自分としては何ができるかを考えると、後輩の指導なんてできる柄じゃない気がした。 自分は選手として役に立ちたいと思ったけど、いまさら復帰させてもらっても、試合に出れるくらいにフィットネスが戻るかどうか分からないという不安があった。
「義を見てせざるは勇無きなり。」 水上さんが僕に言ってくれた言葉だ。 この言葉によって、僕は2回目の復帰を決意することができた。 「背中でお前のプレーを後輩達に見せてやればいい。」 とも、水上さんは言った。 復帰するということは、後輩達の経験を奪うことになってしまう可能性もあり、そんなことをしてまで僕は復帰してもいいのか、という迷いを振り払うことができた。
やらせてもらおう、と思った。試合に出れるかどうかなんて考えずに、自分がやりたいと思ったことをまず実行することにした。
復帰して10日後、僕は日体大戦に出ることができた。 そして、試合は東大の勝利に終わった。 自分達の限界を出し切り、そして勝利を信じ、それをひたむきに求め、がむしゃらにプレーした結果だと思う。 でも、これは今も後悔していることだけど、僕は試合中1度だけ、もうだめかな、と思ってしまった。 13-3 で東大がリードしていた後半30分頃だったと思う。 日体が必死になってアタックしてきて、東大の自陣ゴール前まで迫ってきたときがあった。 このとき、僕は、「十分やったよ、俺は。」と自己満足というか、諦めというか、そういうことを思ってしまった。 その直後、僕は周りの下級生の仲間達を見て、彼等がまだ全く勝負をあきらめていないことを感じた。 試合に出れなかった部員も、応援にきてくれていた人たちも必死になって応援してくれていることを感じた。 「まだ、あきらめちゃだめなんだ。」と思った。 結局、1度は陣地を押し戻したものの、その後の長い防戦の末、モールを押し込まれてトライを奪われた。 でも、そのときには既に、絶対に勝ってやるという気持ちが僕の中に再び湧き出ていた。 そして、今までの試合で一番長く感じたロスタイムの末に東大は勝つことができた。
自分の限界に挑戦すること。自分で自分を追い込むこと。 これは僕が特に4年生になった頃から常に心掛けている事だった。 限界だと思ったところまで追い込むと、そこからまだ先があり、まだ成長できることに気づく。 限界の先にまた新しい限界があることは分かってる。 でも、またその限界まで行きたいと思う。 そうすることで、自分が少しずつ成長していけるから。 僕は日体大戦で自分のその心掛けがまだまだ甘いことを思いしり、同時に、まだまだ自分が成長できる部分があることを知ってうれしかった。
結局、日体に勝ったあとは、青学に勝っただけで、対抗戦2勝という結果になってしまい、筑波に勝ちたかったなぁと、いまでも思っています。 対抗戦の中で、僕達は能力的には最下層に属すると思う。 そんな僕達が勝つためには、まず、自分達を限界まで追い込んで、持っている能力を出し切らなければならない。 そうやって、初めて勝つことができ、喜びがあると思う。 後輩のみんなには、今シーズン以上の喜びを味わって欲しいです。
最後に、なんで僕は6年もプレーしたんだろうと考えたとき、勝ちたかったから、というのはもちろんだけど、東大ラグビー部が僕にとって非常に魅力ある部だったからということに気づきました。 そして、そのお世話になったラグビー部に恩返しがしたかったという気持ちもあって復帰したのかなとも思います。 自分自身も少しは成長できたと思える6年目の秋でした。 こんな部を作り上げてくれたOBの皆様や現役の人たち、東大ラグビー部に関係している全ての人たちに感謝の気持ちでいっぱいです。 ありがとうございました。
そして、いつも大声で応援してくれた同期のみんなへ。 試合中くじけそうになったとき、みんなの声には心から励まされました。 ありがとう。 僕達の4年間の練習は決して無駄ではなかったことが、少し遅れてだけど、対抗戦勝利という形で証明することができて本当によかったと思います。 一生、友達でいてください。
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