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VOICE:2025年 | ||
「Controllable」 副将 領木彦人 | ||
自分は負けず嫌いだ。 小さい頃、中国で日本人という理由だけで仲間外れにされたことがあった。日本人であることは変えられない。だから、何もできず、ただ悔しかった。あの経験が、自分の中に一つの誓いを生んだ——コントロールできるものでは絶対に負けない。絶対に馬鹿にされない。 そのメンタリティーで転校や受験を乗り越え、今ここにいる。東大ラグビー部でも、それは変わらないと思っていた。負けたくない気持ちと、それ相応の努力があれば、結果は自ずとついてくる。そう信じていた。 しかし、現実はそう甘くなかった。どれだけ勝てると信じて練習しても、試合では負けることがある。その中でも忘れられないのは、2年前の学習院戦だ。一聡さん率いる学習院に完敗し、入替戦出場の希望は断たれた。試合後、大西さんに怒られている最中、耳に入ってきたのは、狂喜乱舞する学習院の部員たちの声。その後のAMFで、彼らと談笑する部員の姿を見たとき、悔しさで体が震えた。 自分たちは確かに努力していた。勝つために準備していた、なのに、結果は完敗——そのとき、痛感した。自分たちの力ではどうにもならないことがある。 ラグビーには、コントロールできないものが山ほどある。相手の強さ、レフリーの判定、天候、グラウンドの状態。そうした要素に心を乱されていては、試合の流れを自ら手放してしまう。 だからこそ、コントロールできるものにフォーカスするしかない。 自分の準備、日々の積み重ね、1プレーごとの集中、試合中の判断、声かけ、そして最後の一歩を出し切ること。自分が支配できる領域に、全力を注ぐ。その先に勝利がある。 そして、それはラグビーだけの話ではない。どんなに不公平な状況でも、自分ができることを愚直にやり続けた人間だけが、最後に誇れる結果を手にする。 勝つために、最後の一瞬まで、自分のすべきことを全うしよう。 2025年2月8日 東京大学運動会ラグビー部 副将 領木彦人 |