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ラグビー部リレー日記
突然の引退
投稿日時:2018/12/11(火) 21:52
東大ラグビー部4年の芝村です。
はじめに、東大ラグビー部をご支援くださっている関係者の皆様、本当にありがとうございました。
城戸からの紹介にもある通り、私は今年の7月8日の九州大学との試合中に膝の前十字靭帯を断裂してしまい、大切な最後の夏合宿と対抗戦シーズン(秋シーズン)は、ラグビーはもちろんのこと、日常生活すら満足にできておりません。大切な時期に何もプレーすることができず、申し訳ございません。
城戸からリレー日記が回ってきましたが、城戸には夏合宿中や手術・入院等で地元兵庫にいた期間中に、毎日情報を共有してくれていたことを感謝しています。怪我をしたあの日以来、最初で最後のリレー日記となってしまい、この場には何を書き残しておこうかということには大いに悩まされました(そもそもリレー日記を書くのが約半年ぶりです)。長文になりますが以下に記します。
----------
引退の確信にはほんの数秒しか必要なかったように感じる。
バキッという音とともに膝が曲がる瞬間を、時が止まっていたかのようにしっかりと認識し、最初は痛みや恐怖心からグラウンド中央で悶えていた。他の人からは「完全独走状態だったのに一人で転び、かつノックオン」としか見えなかったプレーであり、そののたうち回る様を見て異変に気付いたことであろう。しかし不思議なことに、痛みに悶えだして間もなく、頭の中の一部が急に冷静になり、本当に大きな怪我で卒部までに復帰はできないということを何故か確信した。あの時恥ずかしながら大泣きしていたが、痛みによる涙ではなく、大切な時期の目前に道半ばにして引退となる悔しさや悲しさによる涙であり、思いがこみ上げてしまったのだ。実際痛みはそれほど感じておらず、九州大学のトレーナーの方や、救急搬送先の医師の各種検査・質問に対してほとんどを「痛くはない」と回答することとなり、大きな靭帯損傷等はないとの診断が下されていた。一方で、何を言われても、内心では大怪我で引退だという確信は揺らぐことはなかった。
翌日精密検査を行い、チームドクターの田崎先生に診ていただいた結果、前十字靭帯断裂との診断で、案の定プレーヤー生活引退と手術を宣告された。確信し分かってはいても、いざそう言われると信じられない気持ち、信じたくない気持ちばかりだったのが正直なところだが、すぐに親とも連絡を取りながら手術に関する検討等に移行していただき、感情が入る余地などなく一気に進めていただけた。そして、会計後の帰り際に同期全員に報告してやっと実感が湧き、呆然とし果てながら帰ったことを明確に覚えている。
ラストシーズンの夏前に大怪我をしてプレーできなくなるような人生、それからの生活(チームへの関わり方の面、怪我に関する面、学業面など全面的に)もイメージ通りではなかったように思う。
骨挫傷や腫れなどの怪我状況に加え、8月下旬に受けなくてはならなかった大学院入試との調整等により、8月末に地元兵庫での手術で決定となった。そのため、7月中はスタッフの一員として仕事を手伝い学びながら、同期らとも話して、退院しリハビリをして東京に帰ってきてから残されるわずか3ヶ月間で、どのように関わっていくかの計画を練った。そうしてスタッフの仕事と分析の仕事を援助することに決定した。前者に関しては、全く理想的でなかったように思う。というのも、回復速度が事前の想定に比べて明らかに遅れてしまっていた上に、11月末に決まっていた卒論の提出と発表に向けてリハビリに集中してばかりいられる状況でもなくなっていたため、あらゆる行動に制限をかけた結果、部活への出席回数が減ってしまっていたからである。後者に関しては、幸いにも私は楽しんで理想を追求できる分野であったため、良い仕事ができたと思う。また、プレーヤーをしながら分析の骨の折れる作業も高い精度で行っていた人や、本職らしく素晴らしい分析のまとめを制作していた人には、大いに尊敬の念を抱かされた。
状況を受け入れて対応し、少しでもポジティブに捉えなおし、大切な対抗戦の時期をそのように過ごしてきたわけだが、どうしても目標を達成できなかったという思いは常に存在していた。というより、目標を達成するチャンスさえも失ってしまった絶望感であろうか。やはり対抗戦に出たかった。対抗戦の試合の時に、勝つも負けるも、一試合でも、ワンプレーでも、ピッチ上にいたかった。そんなことはおこがましくて言えないとすると、復帰の可能性がある中でリハビリ等の日々を過ごしたかったし、練習やB戦でも良いのでアピールや成長をまだしたかった。いずれにせよ目標の根底に「ラグビーができること」があるのは間違いがなかった。予期せぬ大怪我で悔いようもないが、このチームでラグビーがしたかったし、ご指導くださった方や人として成長させてくださった方や応援してくださった方に、ラグビーする姿を見せたかった。他の部員たちには四年の引退試合まで悔いなくラグビーをやりぬけることを祈っている。
最後になるが、入院時の忘れ得ぬ思い出を一つ記しておこうと思う。当時、夏休み明けということもあって(兵庫の実態なのかもしれないが)病棟には同世代は知る限り自分の他に1人しかいなかった。私の退院が翌日に迫った入院14日目、ついにその人とリハビリ室で会えて、話を聞いてみると、某大学のラクロス部の1年生でラクロスを始めたばかりであり、彼も同様に前十字靭帯を断裂したようだった。お互いの理学療法士も交えて談笑していただけだったのだが、その中の彼の「ラクロスが何人でやるスポーツかも覚えていない。でも同じポジションの人間だけはしっかり把握している。」という発言があった。この度を越した競争心は、笑い話であると同時に見習うべき姿勢でもあると思った。今年は初めから個人的にも競争心を強め、さらに深津HCらから競争意識を学び取っていたつもりであった。ただ、自分の4年間の大きな反省の一つとして、向上心やアピールする心を持ち、上手くなる実感を得たり好プレーをしたりということはあったが、この明確な競争心を強めるのが遅すぎた、そして足りていなかったことが挙げられる。たった4年間の大学ラグビー生活、1年1年の実績の重みも大きい中で、1年生の頃から常にスタメンフル出場を狙い、自分の上にいる者をはじめとしたライバルたちをより意識して練習に取り組むべきであった。今年の春シーズン、スタメンと途中出場がちょうど半分だが、途中出場での活躍にやりがいを見出したある意味でのポジティブさを消し去ってやりたい。これからの人生では競争心もしっかりと持ち、行動したいと思う。
----------
怪我をしたあの頃のことを振り返り、真剣に書いたり話したりすると今でも胸がいっぱいになります。ただ、もう自分が怪我をした瞬間の動画を見られるようにはなりましたし、人に説明する時に、何も考えないようにして強がって言い続けていた「怪我はつきものだし運なので仕方ない」も、ただただその通りだと思えるようになりました。
長くはなりましたが、ありがとうございました。次は、東大の2番としてスクラム・ラインアウトを中心となって支え続け、今年の対抗戦の一橋戦では4年分の思いが詰まった自陣ゴール前での会心のタックルで危機を救ってみせた清水にバトンを回します。
はじめに、東大ラグビー部をご支援くださっている関係者の皆様、本当にありがとうございました。
城戸からの紹介にもある通り、私は今年の7月8日の九州大学との試合中に膝の前十字靭帯を断裂してしまい、大切な最後の夏合宿と対抗戦シーズン(秋シーズン)は、ラグビーはもちろんのこと、日常生活すら満足にできておりません。大切な時期に何もプレーすることができず、申し訳ございません。
城戸からリレー日記が回ってきましたが、城戸には夏合宿中や手術・入院等で地元兵庫にいた期間中に、毎日情報を共有してくれていたことを感謝しています。怪我をしたあの日以来、最初で最後のリレー日記となってしまい、この場には何を書き残しておこうかということには大いに悩まされました(そもそもリレー日記を書くのが約半年ぶりです)。長文になりますが以下に記します。
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引退の確信にはほんの数秒しか必要なかったように感じる。
バキッという音とともに膝が曲がる瞬間を、時が止まっていたかのようにしっかりと認識し、最初は痛みや恐怖心からグラウンド中央で悶えていた。他の人からは「完全独走状態だったのに一人で転び、かつノックオン」としか見えなかったプレーであり、そののたうち回る様を見て異変に気付いたことであろう。しかし不思議なことに、痛みに悶えだして間もなく、頭の中の一部が急に冷静になり、本当に大きな怪我で卒部までに復帰はできないということを何故か確信した。あの時恥ずかしながら大泣きしていたが、痛みによる涙ではなく、大切な時期の目前に道半ばにして引退となる悔しさや悲しさによる涙であり、思いがこみ上げてしまったのだ。実際痛みはそれほど感じておらず、九州大学のトレーナーの方や、救急搬送先の医師の各種検査・質問に対してほとんどを「痛くはない」と回答することとなり、大きな靭帯損傷等はないとの診断が下されていた。一方で、何を言われても、内心では大怪我で引退だという確信は揺らぐことはなかった。
翌日精密検査を行い、チームドクターの田崎先生に診ていただいた結果、前十字靭帯断裂との診断で、案の定プレーヤー生活引退と手術を宣告された。確信し分かってはいても、いざそう言われると信じられない気持ち、信じたくない気持ちばかりだったのが正直なところだが、すぐに親とも連絡を取りながら手術に関する検討等に移行していただき、感情が入る余地などなく一気に進めていただけた。そして、会計後の帰り際に同期全員に報告してやっと実感が湧き、呆然とし果てながら帰ったことを明確に覚えている。
ラストシーズンの夏前に大怪我をしてプレーできなくなるような人生、それからの生活(チームへの関わり方の面、怪我に関する面、学業面など全面的に)もイメージ通りではなかったように思う。
骨挫傷や腫れなどの怪我状況に加え、8月下旬に受けなくてはならなかった大学院入試との調整等により、8月末に地元兵庫での手術で決定となった。そのため、7月中はスタッフの一員として仕事を手伝い学びながら、同期らとも話して、退院しリハビリをして東京に帰ってきてから残されるわずか3ヶ月間で、どのように関わっていくかの計画を練った。そうしてスタッフの仕事と分析の仕事を援助することに決定した。前者に関しては、全く理想的でなかったように思う。というのも、回復速度が事前の想定に比べて明らかに遅れてしまっていた上に、11月末に決まっていた卒論の提出と発表に向けてリハビリに集中してばかりいられる状況でもなくなっていたため、あらゆる行動に制限をかけた結果、部活への出席回数が減ってしまっていたからである。後者に関しては、幸いにも私は楽しんで理想を追求できる分野であったため、良い仕事ができたと思う。また、プレーヤーをしながら分析の骨の折れる作業も高い精度で行っていた人や、本職らしく素晴らしい分析のまとめを制作していた人には、大いに尊敬の念を抱かされた。
状況を受け入れて対応し、少しでもポジティブに捉えなおし、大切な対抗戦の時期をそのように過ごしてきたわけだが、どうしても目標を達成できなかったという思いは常に存在していた。というより、目標を達成するチャンスさえも失ってしまった絶望感であろうか。やはり対抗戦に出たかった。対抗戦の試合の時に、勝つも負けるも、一試合でも、ワンプレーでも、ピッチ上にいたかった。そんなことはおこがましくて言えないとすると、復帰の可能性がある中でリハビリ等の日々を過ごしたかったし、練習やB戦でも良いのでアピールや成長をまだしたかった。いずれにせよ目標の根底に「ラグビーができること」があるのは間違いがなかった。予期せぬ大怪我で悔いようもないが、このチームでラグビーがしたかったし、ご指導くださった方や人として成長させてくださった方や応援してくださった方に、ラグビーする姿を見せたかった。他の部員たちには四年の引退試合まで悔いなくラグビーをやりぬけることを祈っている。
最後になるが、入院時の忘れ得ぬ思い出を一つ記しておこうと思う。当時、夏休み明けということもあって(兵庫の実態なのかもしれないが)病棟には同世代は知る限り自分の他に1人しかいなかった。私の退院が翌日に迫った入院14日目、ついにその人とリハビリ室で会えて、話を聞いてみると、某大学のラクロス部の1年生でラクロスを始めたばかりであり、彼も同様に前十字靭帯を断裂したようだった。お互いの理学療法士も交えて談笑していただけだったのだが、その中の彼の「ラクロスが何人でやるスポーツかも覚えていない。でも同じポジションの人間だけはしっかり把握している。」という発言があった。この度を越した競争心は、笑い話であると同時に見習うべき姿勢でもあると思った。今年は初めから個人的にも競争心を強め、さらに深津HCらから競争意識を学び取っていたつもりであった。ただ、自分の4年間の大きな反省の一つとして、向上心やアピールする心を持ち、上手くなる実感を得たり好プレーをしたりということはあったが、この明確な競争心を強めるのが遅すぎた、そして足りていなかったことが挙げられる。たった4年間の大学ラグビー生活、1年1年の実績の重みも大きい中で、1年生の頃から常にスタメンフル出場を狙い、自分の上にいる者をはじめとしたライバルたちをより意識して練習に取り組むべきであった。今年の春シーズン、スタメンと途中出場がちょうど半分だが、途中出場での活躍にやりがいを見出したある意味でのポジティブさを消し去ってやりたい。これからの人生では競争心もしっかりと持ち、行動したいと思う。
----------
怪我をしたあの頃のことを振り返り、真剣に書いたり話したりすると今でも胸がいっぱいになります。ただ、もう自分が怪我をした瞬間の動画を見られるようにはなりましたし、人に説明する時に、何も考えないようにして強がって言い続けていた「怪我はつきものだし運なので仕方ない」も、ただただその通りだと思えるようになりました。
長くはなりましたが、ありがとうございました。次は、東大の2番としてスクラム・ラインアウトを中心となって支え続け、今年の対抗戦の一橋戦では4年分の思いが詰まった自陣ゴール前での会心のタックルで危機を救ってみせた清水にバトンを回します。
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