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ラグビー部リレー日記
スポーツの論理
投稿日時:2020/07/28(火) 01:32
本人曰く「ラグビーの天賦の才能がある」財木からバトンをもらいました、4年の倉上です。財木が悩んでいたときに、僕と川端が部室前で色々と相談を聞いたのは、僕が1年生だった頃に、先輩に同じようなことをしていただいたからです。財木もいつか、後輩の相談を聞くことになるでしょう。そのときに少しでも僕らのことを思い出してくれたら嬉しいです。
(以下、一人称が「私」に変わりますが、気にせず読んでください。)
私はスポーツが好きだ。中学の頃からずっとラグビーというスポーツに触れてきて、大学でもやっているなんて、世の中の人から見たら「どんだけラグビー好きなんだ」「どんだけスポーツやるんだ」と思われると思う。
しかし私は、単なるラグビープレーヤーではない。大学に行き、多少なりとも学んでいる身である。もちろんラグビー選手としての私と、大学生としての私は、本来異なる場にいる人間であって、混同しすぎてはいけないことは分かっている。ただ、授業とトレーニングが同じ部屋で行われるような生活を、数ヶ月ずっとやってきたからであろうか、どうしても混同してしまうのである。なのでここでは、異なる論理を混同した、ちょっと突拍子もない意見を述べたいと思う。
私は今、卒論構想の佳境を迎えている。テーマはなんとなく定まり、読むべき文献もなんとなくはリストアップできてきた。熱意が足らず、まだ全然読み切れていないのだが。そしてそのテーマというのが、「生活保護受給者に対する偏見」だ。こういった部の公式な場で、社会問題について具体的に言及することが煙たがられるのは承知だが、なにせ今回のリレー日記はとにかく「混同」をしようと決めているので、あえて具体的に言わせてもらった。
先行研究に目を通していると、生活保護などをはじめとする社会保障を受けて生活をされている方に対して、「自己責任」という言葉を投げかける世論があることを、とても痛感する(もちろんケースバイケースではあるが)。この自己責任論は果たして正しいのだろうかと、私は引っかかるところがあるのだが、中には割と引っかからずに、「まあ自己責任だよなぁ」と納得する人もいると思う。おそらくそう思う人は、やる気と能力さえあれば、人は何にだってなれる、何だってできるんだ、と考えている部分が、多少なりともあるのではないだろうか。
少々乱暴な議論かもしれないが、上記のように、頑張れば夢は叶う!という論理は、スポーツにおいて多いように思う。このこと自体を私は否定したいわけではない。というかむしろ、そういう論理が、スポーツのレベルを上げていくし、スポーツを面白くしていくと思う。たとえば人よりも筋肉がつきにくいとか、人よりも運動神経が悪いとか、そういうことを言い訳にしていてはスポーツは面白くない。そういった逆境や、苦難や、どうにもならなそうなことから逃げず、自分にベクトルを向け続けていくことが、アスリートには求められる。「できないんじゃない。やるんだ。」と熱意を持って取り組むこと、これがスポーツをやる上で最も重要なメンタリティだろう。
さらにスポーツでは、勝つことは正しい。なぜなら勝利とは、正しい努力の結果だからだ。勝てなければ何が悪かったのか反省するし、皆勝利を目指して日々取り組む。何ら不思議のないことだ。
でもふと考える。スポーツをひとたび離れたところ、たとえば私がこれから研究対象にしていくであろう貧困問題の世界などでも、それは正義だろうか。とんでもない議論の飛躍であることは百も承知だが、ふと考えてしまう。言い訳せずに日々戦い続けろ、そして勝利を目指せ。負けたのなら、何が悪かったのか考えろ。自分にベクトルを向け、向上心を持って改善に努めろ。こういった論理がもしスポーツの世界を飛び出して、世の中一般の正義として捉えられるようになったらどうだろうか。
そのようなスポーツの論理の中で青春の多くの時間を過ごしてきた私は、おそらく社会に出ても、「ラグビーやってた人」だとか、「体育会系」というレッテルを多少なりとも貼られて生きていくだろう。でもだからといって、まるでスポーツの試合のように勝ち負けがハッキリしていているような世界を生きたいとは、私は絶対に思わない。勝ちでも負けでもないようなことがこれから何度も何度も起きて、自分にベクトルを向けるだけじゃ乗り越えられないようなことが何度も何度も起きると思う。そんなときでも、アスリートのように困難に立ち向かう強さを求められるのだとすれば、何だかとても生きづらいなと思う。
だから結局、スポーツはスポーツなのだ(自分で「混同します」と言っておきながら、結局「混同しちゃいけない」という結論になってしまった)。スポーツが世の中に与える影響は、本当に大きいと思う。アスリートはこれまでも、そしてこれからも、勇気を与え続ける存在だろう。でも誰もが彼らのように強くはないし、もっと言えば彼らも、私たちが思うほど強くはないと思う。私たちラグビー部は、今「強くなろう」としている。でも「強くなろうとする」ということと、「強くなくてはいけない」ということは、全く違う。弱いから、強くなろうとするのだ(そもそも東大ラグビー部は弱い)。根底には弱さがある。そしてその弱さが露呈することもある。それはスポーツの面だけではなく、世の中一般に言えることではないかと思う。だから弱さを認められなかったり、弱いものを否定したりする人間であっては、絶対にいけないと思う。勝者と敗者がいるのなら、敗者への最大限のリスペクトを。自らをエリートだと思うのなら、そうでない人への最大限のリスペクトを。分かっていても、なかなかできないことだ。
ここまでなんだか、スポーツを否定するようなことを書いてきてしまったが、そんな意図は全くない。私はやっぱりスポーツが好きだし、ラグビーが好きだ。それは多分、ラグビーが楽しいからだと思う。ラグビーは、勝っても負けても楽しいと思う。ただ、何もせずとも負けることはできるが、何かしないと勝つことはできない。せっかくやるのなら、何かしたい。だから私は、勝ちたい。
お前はスポーツ選手だろ、そんなことは勝ってから言え、と思われるかもしれない。しかし少なくとも東大ラグビー部は、「勝った者にしか発言権がない」組織ではない。私はそう思っている。だからこういうことが言える。素晴らしいことだと思う。
次は、センターパートで唯一清潔感のある廣瀬にバトンを回します。廣瀬とリモートで会うとき、毎回同じ服で、毎回同じ背景のような気がして、もしかしたら同じ動画をずっと流し続けているだけなのでは?と疑ったことがあります。
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