ラグビー部リレー日記
選択
投稿日時:2019/08/04(日) 18:40
紹介文を日記本文の内容にわざわざ絡めようとした訳では無いのですが、わたしにとって初めてのリレー日記は、ラグビー部に入部を決めるに至った4か月前の新歓期のことを書こうと思います。
わたしの新歓期は、世間一般の楽しくてにぎやかなイメージとは少し異なるものでした。
念願の東京大学合格を掴み取り、意気揚々と大学に入学したわたしは、何かのんびりとしたサークルにでも入って緩い人間関係を築き、のほほんと日々を過ごそうと心に決めていました。
しかし、ひょんなことからテント列後に連れていかれた新歓で、ラグビー部に出会ったのです。
和気あいあいとした雰囲気に居心地の良さを感じ、話を聞いたスタッフの先輩の主体性に衝撃を受けたわたしは、当初思い描いていたキャンパスライフから一転、ラグビー部のスタッフとして仕事をすることに魅力を感じ始めました。
どれぐらい魅力を感じたかと言うと、新歓パンフレットの部員紹介欄を写真に撮って暇さえあれば眺めていた結果、4月の2週目ぐらいには部員の名前をほぼ全員覚え、リレー日記を去年の分まで遡って読み漁り、ほかの部活の練習を見学に行った時、地面に転がっているボールが完全な球形なことに違和感を覚えるレベルでした。最後のは自分でもよくわかりません。
しかし、わたしの入部時期は4月30日と今年の新入生の中でも相当遅い方で、それまでの間ずっと心にモヤモヤしたものを抱えていました。
実はわたしは高校在学中、人間関係や受験など様々な要素を天秤にかけた結果、所属していた運動部の部活動に行くのを途中でやめるという選択をしており、引退まで籍は置いたものの去り際は美しいものではありませんでした。自分なりに考えて決めたことであり、結果的に東大に現役合格できたので正直あまり後悔はしていないのですが、道半ばで部活から離脱した過去を背負っている以上、再び同じことを繰り返すと部に迷惑がかかるだけでなく、自分で自分を信頼できなくなってしまうという恐怖心がありました。また、入部時には大好きだった部活が嫌いになったという経験から、これほどまでに好きになったラグビー部という場所を嫌いになりたくない、という訳の分からない理由でも入部をためらっていました。他にも様々な不安要素があり、どうしても入部に踏み切れなかったのです。
出すべき答えは本当にラグビー部なのか。そもそもわたしはラグビー部に入部するにふさわしい存在なのか。それがどうしてもわからず、ラグビー部以外の運動部の新歓に片っ端から行きました。最初はそれなりに楽しかったのですが、人見知りなわたしは初対面の人と毎日ご飯を食べることを段々と苦痛に感じ始めました。ただでさえ新生活で心身共に疲れているのに、授業後新歓があってすぐ帰れないことは大きなストレスでした。新歓後その都度周りの人に感想を聞かれて、ぐちゃぐちゃな自分の気持ちを言語化する必要性に迫られることも耐え難くなっていきました。また、もしラグビー部より魅力的に感じる部活に出会ってしまったらどうしようという恐怖と、もはやそういう部活が現れてくれるならなんでもいいからそこに入ってしまいたいという投げやりな気持ちの変なジレンマ状態にも陥っていました。
「部活選びなんて直感、直感!」
新歓期、いろんな人から言われた言葉です。その言葉に従って、直感でラグビー部を選べたらどれほど楽だったでしょうか。しかし、それはできませんでした。部活に入ったら楽しいことばかりではないんだろうな、とはうっすら思っていました。行き詰まった時、自分の芯が揺らいでしまう要因を作りたくありませんでした。あの時もう少ししっかり考えていれば…ではなく、あの時あれだけ悩んだのだから、と自分を奮い立たせたかった。わたしにとって、悩むことは義務ともいえるものでした。
授業中はほぼ部活のことを考えていました。夢の中でも部活のことを考えていました。やがてベッドの中で目覚めて、朝かなと思って時計を見るとまだ深夜2~3時、ということがほぼ毎日続きました。
受験期は長く苦しいものでした。しかし、東京大学合格というひとつの明確な目標に向かって正しい方向から日々努力を続ければ、ゴールにたどり着くことはできました。それに対して部活選びには絶対的な正解は無く、もし個人個人に正解が用意されていたとして答えは入部してからでないとわかりません。そういった意味で、新歓期の葛藤は想像を絶するものでした。
1ヶ月後、わたしが最後に出した答えはラグビー部でした。
革命的な何かが起こった訳では無いのですが、ラグビー部以外の場所で4年間を過ごす自分の姿はどうしても想像できず、やはりわたしはここにいたいのだと確信できたことで、入部届けを出す勇気が出ました。
嫌いになったり、失敗したりするぐらいなら目を向けず、関わらなければいいという消極的選択。そのリスクを冒してでも、挑戦したいと思ったことに一歩足を踏み出し、新しい扉を開けるという積極的選択。後者を自分の力で選んだことは、18年半のわたしの人生の中で1.2を争う大きな選択だったと思います。その選択を自信を持って成せたということが、わたしの新歓期の大きな意義だったと思います。
自分のいる環境がどれだけ恵まれた温かいものであるか痛感したことも、新歓期の意義です。新歓から疲れきって帰り、ただいまも言わずに寝てしまうわたしを何も言わず許してくれた両親。ラグビー部に感じる魅力を口にしながらもあまりにも悩むわたしに対して、本来の役目であろう自分の部活への勧誘を打ち切り、琴音ちゃんはラグビー部で間違いないと背中を押してくださった、違う部活の先輩方。えのきがラグビー部にいる姿が見えると言ってくれた高校時代の友達。夜遅くに電話で何時間も話を聞いてくれて、悩むという行為を他愛もない話で一瞬忘れさせてくれた同クラ。そして誰よりも、東大ラグビー部の魅力をわたしに教え、わたしを勧誘してくださったラグビー部の先輩方。全員がこの日記を読んでいるかは怪しいところではありますが、この場を借りて感謝を伝えさせていただきます。皆様の一挙一動がすべて糧となり、こうしていまのわたしが居ます。本当にありがとうございました。
4時起きでお弁当を作り、大急ぎで家を飛び出て、寝過ごしてしまう心配を心の隅に、けれどラッシュ時ならぎゅうぎゅう詰めの電車で座れる喜びをじんわりと噛み締めながら朝練に向かう日々。あれだけ色んなことを悩んでおきながら新歓期には何故かまったく想定していなかった事態なのですが、ラグビーのルールはわからない、メニューは見分けられない、ビデオの撮り方は覚えられない、と目の前の課題は山積みです。部活や試合の時臨機応変に動けず、自己嫌悪に陥ってしまうことも多々あります。それでも、新歓期の自分に胸を張れるよう、日々努力していきたいと考えています。まだまだ未熟者ではありますが、4年間どうぞよろしくお願い致します。
東京大学ラグビー部。この一員となれたことを心から誇りに思います。
小さい頃から自分の気持ちや考えを文章にするのが大好きで、リレー日記の順番が回ってくるのをとても楽しみにしていました。記憶が遠いものとなる前に、新歓期の思い出をこうして書き残すことができただけでなく、ラグビー部に抱いた最初の新鮮な気持ちを思い出す良いきっかけにもなりました。一発目から膨大な文章量となりましたが、最後までお読みくださりありがとうございました。
今日で4日間の山中合宿が終わりました。合宿は今日で一段落ですが、夏練自体は始まったばかりです。ひと夏で少しでも成長できるよう、明日からもラグビーに真剣に向き合っていきたいです。
次は、シークレットコンパでの独特なテンポの司会が印象的だった倉上さんにバトンを渡します。わたしがビデオの撮り方がわからずにオロオロしていると、気づいてちょこちょこ指示をくださる倉上さんの背中に、わたしは羽が見えています。
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