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ラグビー部リレー日記
ラグビーは闘球じゃない!
投稿日時:2022/11/09(水) 15:42
身長も体重も体格もほぼ同じの一木からバトンをもらいました、2年の田村です。一木と僕の一番の違いと言ったら朝8時の朝練の日に11時まで寝るか否かぐらいでしょうか。遅刻するとタックルダミーを押す暗黙の罰があるのですが、彼はどうやらそれが大好きなようです。
紹介にもあったように、来年1年間オーストラリアに留学することにしました。勝手な選択ではありますが、同期や國枝さんをはじめ、様々な先輩後輩に応援していただいて嬉しいです。ラグビーができる国を選んだので、成長して帰ってきます。
日本語とは実に便利なもので、当て字が様々な単語に使われる。スポーツも例外ではなく、(便宜的に)ベースボールは野球、バレーボールは排球、バスケットボールは籠球と、簡潔に書くには実に適している。では、ラグビーはどう表すのか。闘球である。しかし、僕はラグビーの和名を闘球とすることに異議を唱えたく、この文章を書くことにした。
闘球。なんかダサくないだろうか。野球、排球、籠球、庭球などがある中、「闘う球」。なんだか具体性を伴っていない気がしてモヤモヤする。確かに、ラグビーは闘うスポーツではあると思う。しかし、スポーツにおいてたたかわないことなど基本ないし、何より「闘う」という言葉のチョイスがラグビーを野蛮なスポーツとして捉えていることを前提にしている気がするのだ。決闘、乱闘、闘牛、死闘、格闘。闘という漢字から想起されるこれらの熟語はやはり(言葉を選ばなければ)暑苦しいように思える。ラグビーはもちろんアツいスポーツだし暑苦しいというのは一種の賞辞にも聞こえるかもしれないが、上流階級のスポーツだったラグビーをなんだかもう少し上品に表して欲しいところである。現代語で言えば、一種の「厨二病」を匂わせるネーミングに思えるのだ。このラグビーを闘球と呼ぶことへのモヤモヤは幼い頃からずっと持ってきたのだがいまだにうまく表現しにくい。これを読んでいるあなたも一度は感じたことがあるのではないだろうか。ラグビー部を「闘球部」と呼んだり、「闘球魂」と言ったフレーズを用いることに僕はずっと名状し難い違和感を覚えてきた。(最近でも1年生の温人が来ていたとある高校のウィンブレに「◯◯高校闘球部」と書いてあってびっくりした。)12年間のラグビー人生でラグビーのことを闘球と呼ぶ選手や関係者など会ったことがない。
ラグビーの和語の代替表記を考えるべく、僕はこのリレー日記を書く2ヶ月ほど前から適切な漢字を探していた。せっかくの機会なのでここで幾つか提案してみる。
例えば紳球とかはどうだろうか。1823年にイングランドのラグビー校で偶然始まったとされるラグビーは元々上流階級のスポーツであったこともあり、現在でもよく「紳士のスポーツ」と言われる。真偽の程は不明だが英語に“Football (soccer) is a gentleman's game played by hooligans, and rugby is a hooligan's game played by gentlemen.”という格言もある。紳球と言ったらなんだかかっこよくないだろうか。
と思ったが悲しいかな多分通じないしよく考えてみればダサい気もする。紳士すなわち上流階級のスポーツといえばやはり乗馬、ポロ、ゴルフ、テニスあたりが一般的には知られているだろう。ラグビーが元来上流階級により嗜まれたことはあまり知られていないことを考慮すると、紳球はポロに譲らないといけないだろう。(ポロにはポロで馬球っていう一目で納得できる和名がありました。)
中国語ではラグビーのことを「橄榄球(Gǎn lǎn qiú)」という。橄榄 とはオリーブのことで、ラグビーボールの形が似ていることから由来していると思われる。オリーブは日本語でも漢字で橄欖(かんらん)だから、和名を「欖球」としてみるのはどうだろうか。欖という漢字は橄欖以外では用いられないので、欖球だけで一意にオリーブボール=ラグビーであることが想起できるし、なかなかな妙案なのではと思う。橄球でも良いかもしれないが欖球の方がしっくり来る。似ている食べ物になぞらえたスポーツの和名はなかなかないだろうから独自性があってお洒落な気がする。
ただ、ここでも問題がある。橄も欖もともに非常用漢字なのだ。闘球よりもラグビーを的確にに表しており、多くの人に好んでもらえる漢字という点では、非常用漢字は幾分弱いかもしれない。小さな子に親しんでもらう和名にするなら、もっと読みやすく、書きやすくないといけないだろう。加えて、「らんきゅう」はバスケットボールのもう一つの和名「藍球」と被る。同じ読みは避けたいところだ。
ならば、蹴球はどうだろうか。蹴球というと一般的にはサッカーの和名として知られている。実は、ラグビーのことも蹴球と呼ぶ。E•B•クラーク先生と田中銀之助氏により慶応義塾の学生を指導したことを端初として日本に1899年にラグビーが伝わったのだが、日本最古のラグビーチームを持つ慶應大学はラグビー部のことを「蹴球部」と呼ぶ。ちなみに1921年に創部したサッカー部のことは「ソッカー部」と名付けられた。(蹴球は先に使われていたのと、soccerをソッカーと読んだため。)早稲田大学も「ラグビー蹴球部」であり、日本ラグビーを黎明期から支えてきた早慶両校が「蹴球」を用いていることからもラグビーを蹴球と呼ぶことの妥当性が伺えるのではないだろうか。
また、日本最初のサッカーチームと言われる東京蹴球団の創部は1917年であるため、早慶両蹴球部よりも後に「蹴球」という単語を使っているのだ。調べを進めると1899年に兵庫県尋常師範学校に日本人のみのサッカーチームが創設されたらしいが、この頃から「蹴球」という単語がサッカーで用いられていたとしてもラグビーと同年だ。慶大蹴球部の100年史によると、クラーク先生の採用情報が「慶應義塾学報」第11号(1899年1月15日発行)に載っており、1899年の中でも初め頃から慶応でラグビーを教え始めていたのかもしれない。(すなわち、日本人最初のラグビーチームの方が日本人最初のサッカーチームよりも先にできていた可能性が高い。)ラグビーの正式名称がRugby Footballであり、Footballからの派生でラグビーが誕生したことを考慮すればラグビーのことを「蹴球」と呼ぶことにはなんら問題はないのである。
とは言いつつも結局蹴球というのもこじつけだと認めざるを得ない。実際サッカーが伝来したのは1873年で、当初は「フートボール」と呼ばれていたとは言え、蹴鞠の一種と紹介されてしまっている以上蹴球は譲らないといけないかもしれない。それに、現在蹴球=サッカーというのが広まっている状況でラグビーを対抗的に蹴球と呼んだところで世間から嘲笑されるだろう。欖球のところで自分でも「同じ読みは避けるべき」とか言っていたし。
結局ラグビーはなんと呼んだらいいのだろうか。結構考えたが僕には良い案は浮かばなかった。闘球という呼び方が蔓延るのは嫌だが、あまり聞く場面もないし多少は我慢するしかないかもしれない。何か妙案に辿り着いた人がいればぜひ教えてください。僕はもっと漢字を勉強します。
次は1年の福元です。彼と僕は高校時代同じ合同チームでプレーしていました。男子校の匂いがぷんぷんする彼ですが、また一緒にグラウンドでボールを追えて嬉しいです。同じSHとしてもいい刺激で、再来年僕が留学から帰ってきた時にまた切磋琢磨できるのを楽しみにしてます。
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