ラグビー部リレー日記

大好きなゼロヒャク

投稿日時:2024/12/28(土) 20:30

 副将のあきおからもらいました、吉村寿太郎です。初めてラグビー部の体験練習に行ったときから、あきおはとてつもなくデカく、デカいのに動けるすごいおじさんでした。当時18年間生きてきて初めて、本当に俊敏なデブを見つけ、ラグビーすげえと思ったのがファーストインプレッションです。試合の勝敗よりスクラムを重要視しているくらい生粋のプロップで、口下手だけど真面目で自責思考で責任感のある、僕から見たら精神的に強い男です。頼りがいがありました、一年間ありがとう。地下ライブ、というか中野twl、は来年から通い詰めていきましょう。隣にサクラより笑うゲラがいるとライブが三倍面白くなると知ったので、皆さんもハードルが高そうなお笑いライブに行くときはあきおを持っていくことをお勧めします。
 




 ヒャクかゼロかという極端は気持ちいい、どちらかに振り切れているのはかっこいい、という目立ちたい小学生みたいな思想が昔から自分を支配している。気になる芸人のラジオを見つけたら、第一回放送が十年前だろうと初めから遡って現在まで聞き切る(ヒャク)し、逆にまだ完結していない漫画が話題になっていても、読み切れないのが嫌だから絶対に読み始めない(ゼロ)。大学受験するなら言い訳しない環境でトップの東大(ヒャク)を目指すし、逆に「ノー勉だわ」と言いたいからには試験開始まで強い意志をもって一切何も開かない(ゼロ)。一年中100%半袖半ズボンの小学生は皆に尊敬されるべきだし、大学四年生も終わるというのに過去交際人数が0人の人は尖っていてかっこいい。何か目の前にあることに対してめちゃめちゃに集中して取り組む(ヒャク)か、逆に不要なものとして一切取り組まない(ゼロ)か、というどちらかに振り切っている方がイケていると思っている所が自分にはあると思う。何事もヒャクかゼロを取り続ける方が結果を出せると信じている。そして万一結果がでなかったときでも、自分がサンジュウやハチジュウだったら確実に後悔するけど、ヒャクかゼロだったら後悔もないはずである。サンジュウやハチジュウというのはつまり悪く言うと半端で、良く言うとバランスがとれている選択の仕方のことである。


 無事ヒャクの東大に入り、サークルなんてゴジュウだと思ったから、運動部だけを見て回った。ラグビー部に入ってからは、お酒飲まない(ゼロ)方が合理的だと思ったから頑なに飲まなかったし、大学での勉学はヒャクでは取り組めないと分かっていたから最低限以上やらなかった。点数は合格ラインの50点に近いほど無駄がなくてすごいと思っていたし、前期の必要単位数63単位をぴったり取得したときはそのゼロ感に気持ちがよかった。そしてこの四年間は部活に常にヒャクを持っていき続けたいという気持ちも当然あった。


 一年生のはじめからそういう意味で充実した部活の日々が送れていたと思う。ジュニアコーチは藤井さんや太田さんを始めとして良い意味で厳しくて本気で指導してくれたし、同期に関してもストイックで自分達を追い込める人、ラグビーをよく考えている真面目な人が多い印象だった。東大ラグビー部の環境はヒャクを追い求めるのに十分なほど整っていた。練習がたくさんあって指導者に恵まれ、毎回の練習で頑張った分成長を感じられる。練習以外の時間はご飯を皆で限界になりながら食べたり、ウエイトもやる気次第で高いボリュームで行ったりできた。一年生の時から自分は捻挫や肉離れなど怪我が人より多めだったが、急に体重が増えたからかな、と思いつつ、怪我をしたときはストレッチやマッサージなどケアの時間を増やして、ヒャクできることを探した。怪我は嫌だったけど、心のどこかでは「ヒャク頑張ってプレーしているからこその怪我かもしれない」と正当化している部分があったし、「痛みを我慢すればプレーできそうならいくらでも無理するのがヒャクのラグビー選手像」だと信じて、コーチやトレーナーに気付かれるまでは無理する方が正しい姿勢だと考えた。無理したせいで結果的に怪我人の期間が伸びる可能性は考えていたが、もし無理しなかったら「この試合に出ておけばよかった、もっと練習すればよかった」と必ず後悔すると思ったから、その選択を取り続けた。


 二年生の春に右膝後十字靭帯を損傷して三ヶ月DL(怪我人)に入った。皆がラグビーしているのを見て羨ましいと思いつつ、上半身と左足をデカくしてフィットネスをつける期間とポジティブに捉えた。その期間にラグビーを見る癖がついたこともあって、復帰戦のB戦で活躍できた。一年生の時は試合後反省点ばかり思いつく悔しい負け試合ばかりだったので、初めて手ごたえがあって初めて勝ったそのB戦はとても印象に残る。そこからAチームに絡めるようになり、コーチに評価されてきている実感と、自分でも体感として上手くなっているのが嬉しかった。「怪我は嫌だけど必ず報われる」という考えがそのころ自分に浸透した。


 三年生になると、四年生の人数が少なかったため、三年生がAチームにたくさん入った。自然と責任感も生まれて、四年生のためにこの試合に勝ちたいとか、チームが勝つために何をすべきか、とか一丁前に考えるようになった。とはいえ自分は上手い方ではなかったから、練習やプレーに関していえば常に自分の成長だけ考えてヒャクで取り組んだ。結果的に対抗戦三勝で終わったのは悔しかったが、四年生がヒャクで頑張っている姿はかっこよかったし、来年この悔しさを結果にして返そうと意気込んだ。


 今年は結果を出せる代だった。春の国公立大会や定期戦では、今年の東大ラグビー部はひと味違うということを少しずつ匂わせていた。でも勝ちきりたい試合を取りきれないのは去年までと同じだった。国公立大会決勝の学芸戦や早稲田戦前半は印象深い。それまでやってきたことが出せてやりたいラグビーができている感覚はあったのに、2試合とも結局は負けてしまった。対抗戦シーズンでは四連勝したけど、成蹊戦、明学戦、武蔵戦で連敗した。結局は四勝三敗、歴史を変えることはできなかった。対抗戦の一戦一戦について書こうと思っていたが、正直まだ向き合えていない感じがするからやめる。今でも切り替えられたとは言えない。あの試合をもう一度やり直したいと思ってしまう。四年間の頑張りと周りの期待、今年の自分達の確固たる自信、それらを裏切ってスルスルと自分達の手から入れ替え戦出場がこぼれていく感覚は、残酷でしんどかった。


 反省すべき点はたくさんある。一番は自分の怪我のこと。腰の痛みをごまかして秋までやってきた。よりにもよって一番大事な時期に緊急入院して手術した。不甲斐なすぎる。決断が半端すぎる。思い返せば一年生の時杉浦さんにも、二年生の時國枝さんにも、グラウンドに立ち続けること、無理をするよりコンディションを整えるバランス感覚をもつこと、の重要性を言われてきた。当時自分には、そうすることがロクジュウの選択に思えて、あんまり響いていなかった。ゼロでもヒャクでもなく、うまく調整しているようでは下手くそな自分は上手くなれない、と常に焦っていたからである。前述のような怪我に対する言い訳とポジティブな側面を意識的に培ってしまっていたこともあるかもしれない。今年は先輩方の言うバランス感覚は理解して考えていた。でも今振り返ると結果論として、今年の自分の選択はヒャクではなかった。本当の意味で「ヒャク」というのは、中長期的な自分の成長、チームの成長にとってベストであることだ。自分はいつも目の前のヒャクにこだわったが、リスクテイクを誤ることがあった。今シーズンはそれを結果的に誤ってしまった。身体の不調を多少かばったり無理したりするのは美談に聞こえるけど、違う。大事なのはもちろん最終的に結果を出せるかどうかである。今年の一番大事な試合で、自分はウォーターボーイをやるはめになっていた。チームに迷惑かけてしまった。結果論であることを前提として、結局振り返ったら自分は、中長期的に見てロクジュウかハチジュウくらいの選択をしていた。


 チームに対しても同じだった。今年掲げた規律高い良いチームにどこまでこだわれたか。「絶対に今年変える」と決意していた、下級生の時に感じていたこのチームの文化の悪い部分を変えられたか。アスリートの文化はどこまで体現されたか。それも結果はロクジュウに満たなかった。本当はこだわりたい譲れないポイントはたくさんあったが、その時々でチームの選手層の薄さやチームのムード、目の前の一勝を理由にして、目を瞑った場面がたくさんあった。良いチームであることで強いチームになれる、青山先生から何度も話されていたが、対抗戦までに実現できなかった。


 その時その瞬間ではヒャクを求めていたつもりなのに、あとから振り返ったらロクジュウ、だから結局は反省点だらけになった。こんなに恵まれた環境で、こんなに良い同期、後輩だったのに結果が出せなかったのが悔しいし申し訳ない。今年のメンバー、このチームに対する誇りと自信は大きく、だからこそそれでも結果を出せなかった悔しさと不甲斐なさも大きい。


 ただし自分が言いたいことは実際そこまで悲観的なことではない。目標達成できなかったから結果を見れば当然に反省はたくさんあるが、後悔がいくつもあるわけではない。怪我に関して、今年は自分なりに怪我の捉え方を見直し改め、中長期的なヒャクの視点を持っていた。そのとき自分が考え想定しうるベストなチョイスをした自信はあるから、もう一度戻っても同じ選択をすると思う。チームに関しても同様である。良くも悪くも結果はついてこなかった、というだけ。もっとこうできたというのは勿論あるにはあるけど、これを変えていれば良い結果になっていた、と思えることはない。四年間同期と一緒に努力してきた過程、今年のチームが積み重ねてきた取り組みは、間違っていなかったと思っている。自分はそのとき考えうるヒャクの全力を選択し実行してきたと思う。だから今年は、上で述べた反省の何倍も成功体験や喜びのある一年間だったことは疑いない。1/16に始動、2/7にキックオフしてから、二部練習という魔法により2~3月のフィジカル強化期間の練習時間は例年より何倍か多く、春シーズンの試合数やウエイトトレーニングのボリュームも意図的に多くなっていた。学生のみでの運営を乗り越えて、共にこのチームのメンバーで身体的にも精神的にもキツい日々を乗り越えてここまでやってきた。数値的に見て過去最高のフィジカルを手に入れた。春秋通してたくさんの勝利と継続的なチーム成長を実現できた。これはひとえに自分達の執念と努力の結晶であり、褒めるべきだと思う。


 武蔵大学戦敗戦後の11/26のチームミーティングで話したように、対抗戦終了後の一ヶ月、東大に残されたこの特別な期間に、チームが成長し続けることがこの代の価値となることは間違いなく、自分はこの一ヶ月間前向きに強化をしてきた。自分達四年生にとって引退試合である京都大学戦は当然勝つし、勝つための準備課程で得られる「より良いチーム」は来年以降のチーム文化に寄与できるはずである。大義や大きな目標を背負うことなく、純粋に勝負ができる明日の試合はとてもありがたい機会であり、非常に楽しみである。この四年間、そしてこの一年間の集大成としての、最高のラグビーをしたい。

 


 先輩の方々へ、常に先輩方から学び成長させていただく四年間でした。このチームの強さや愛を知り、考え方を学び、期待に応えられるよう頑張ってこられました。特に卒部以降も現役のために働いてくださっている方々には頭があがりません。今年B戦や合同練習をたくさん組めたり、今年のチームにも関わってくださったりしたことに感謝申し上げます。太田さんは来年からも研究室で一緒なので、感謝はまた再来年以降に先送りしたいと思います。


 後輩へ、理不尽に怖くて結婚もできなそうな不甲斐ない僕ですが、来年以降に大きな結果を出してくれることを期待しています。後悔のないよう、自分の覚悟とこだわりを常にもって、この四年間を大切に使ってください。重要なのは対話し続けることです。チームに関わる上で色々な意見のぶつかりがあることは当たり前であり、それに向き合い続けてほしいです。もし対立しているように感じても、部に関わる基本的に全ての人は「このチームで勝ちたい」という信念が根っこにあるはずです。それがぶれていなければ問題ありません。


 同期のみんなへ、このメンバーでやってこられて良かった。贔屓目かもしれないけど近年で一番強くて良い代だったと胸を張って言えます。皆がそれぞれチームに強い思いを持っていて、常には喋らなくてもその努力を見るとすごく刺激されます。お互いに高めあって真面目に議論しあえる、最高の代でした。ヘルニアでラグビーどころか生きるのが精一杯な雑魚い身体になってしまったとき、チームを完全に任せられる安心感、信頼感がありました。術後お見舞いに来てくれたのも嬉しかったです。明日からはお酒も飲めるので、僕の大学生デビューを見守ってください。


 最後に感謝を述べます。まず東大ラグビー部を応援してくださるファンの方々へ、SNSで見つけたり直接声をかけてもらったり、決して人数は多くはないものの直接東大ラグビー部にゆかりのない人達が、この部を気にかけて応援してくださっていることを体感すると、本当に力になります。また、OBOGの方々へ、試合の応援や金銭的サポートがこの部の恵まれた環境を実現させています。勝てる環境に置かれていることをありがたく思います。また、青山監督兼部長、コーチ陣、トレーナー陣、医師の皆様、四年間で自分に関わってくださったプロの大人の方々によるサポートはなにより心強く、いつも自分を正しい方向へと導いてくださいました。頑固な部分や変なこだわりがあることは自覚していますが、皆様の指導とサポートは常に自分に刺さり、活きてきました。最後に両親と祖父母など家族のみんな、この四年間本当に何の不自由もなくこれだけラグビー部にのめり込めたのは、言うまでもなく家族のサポートあってこそです。ありがとうございました。




 リレー回さないパターンはどうやって終わるんでしょうか。困りました。誰かランダムで人を紹介すれば良いですか。それとも過去の一番好きなリレー日記の回にバトンを渡すことでループを作っても良いのでしょうか。


 次は知性が溢れているらしい同期の雪竹にバトンを回します。2022/02/05(土)の受験生応援企画、雪竹くんの「じゃんけん」。名作です。

 


 さて明日はこの四年間の集大成。意地を京都大学に全てぶつける。A、B両方勝って、証明しよう。

 


主将 吉村寿太郎


 


 


 

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2025年1月

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