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ラグビー部リレー日記
東大ラグビー部の理念/有意義な自粛期間
投稿日時:2020/06/30(火) 23:52
関西人らしからぬ都会的なツッコミに定評のあると言われる内藤から紹介を受けました4年の前原です。今年度リレー日記2周目の1発目なので長文で真面目に書こうと思います。
2020年は誰も予測し得なかった年になっています。新型コロナウイルスの世界的な広がり、BLM運動、オリンピック延期のみならず、世界的な蝗害やオーストラリアの森林火災などの大規模な環境問題もありました。特にコロナウイルスとBLM運動に関しては、世界史上で現代と位置付けられていた我々の生活様式や価値観を転換させうる力となっています。例えば、世界中で働き方が変わりつつある。それに伴い都市部一極化解消に向けた動きもちらほらと見られるようになった。移動を伴うグローバル化の波に陰りが見える。産業化の環境への悪影響が浮き彫りになる。フィンランドが経済と安全は二項対立で処理できない問題であることを体現する。アメリカでは国民国家の矛盾が表面化している。暴力装置が機能不全に陥り、ウェーバー以降の主権国家の前提に綻びが見える。我々はまさに歴史の転換点にいるのだという実感を情報の海の中でひしひしと感じます。
これらのことはメディアを通じニュースとして知るところとなっていますが、我々学生の身としても肌で様々なことを感じ、考えさせられました。
例えば授業でも多くの変化がありました。私は今学期の授業の殆どは愛知の実家で受けました。試験の形式についてはまだ具体的に公表されていませんがこれで単位取得、学位授与が認められるならば大学の所在地付近に住み、キャンパスに通う意味の重要な部分が否定されます。日本全国どこからでも同等の教育にアクセス出来ることになるからです。拡大して考えると、海外の大学教育へのアクセスも従来と比べ非常に容易になる可能性もあります。このように、特に実家が愛知県で東京で一人暮らしをしてきた私にとって、"東大生である"ことや"大学で学ぶ"ことはどういうことなのかについて深く考えさせられました。
部活についてはここに書き切れないほど、特に4年生は自らの存在や組織の存在について観想したと思います。そのような中で私は、この期間は東大ラグビー部の"理念"を見つめ直すいい機会だったと感じます。
4年生は今シーズン始動前、何度も何度もミーティングを重ねました。その中で何度も議論の種になったのは"目標"と"理念"でした。
目標は結果ベースの具体的、定量的な指針であり、今年度は入れ替え戦出場を掲げました。これはその具体性からイメージし易く、それぞれの意見の相違こそあれ、最終的に合意を導くまでの筋道は全員が共有できるものでした。
それに対して理念は、抽象的で長期的な指針であって定義すらも曖昧で、それを言語化する必要性に疑問を持つ者もおり議論は難航しました。議論に際しこれまでの東大ラグビー部約100年の歴史を振り返り、青山監督やOBの方々から貴重なお話をお聞きし、外部の方々の力もお借りしながら思索を深めました。そして自分たちが何故東大ラグビー部に所属しているのか、東大ラグビー部という組織は何の為に存在しているのかという問いを立て、我々なりに不器用ながらなんとか答えを出しました。このホームページの「AboutUs」から「理念」のページに飛べますが、そこには我々が時間をかけて言語化した東大ラグビー部の理念が書かれています。勿論これはこの先何百年と続いていくであろう東大ラグビー部の歴史の刹那における解釈に過ぎず、これから何度も修正されていくことを願っています。
しかし、理念を考えるなどといい、自分たちなりに格好の良い言葉を紡ぎはしたけれども、その意味を心の底から考え、理解出来ていた人は誰一人いなかったのではないかと思います。それが今、幸か不幸か我々の置かれている状況によってある種強制的に、考えざるを得ない事態に置かれました。当たり前過ぎてその重要性にすら気がつかなかった、「部員が集まって練習する」ということが禁止されました。存在が当たり前だった対抗戦、入れ替え戦が本当に実施されるのかも定かではありません。目標が、予想だにしなかった要因により根本から否定されうるという危うい状況に立たされています。それでもなお、私たちは誰一人辞めることなく東大ラグビー部に所属し続けており、いつになるか分からない再会の日を夢見てトレーニングや部員間の交流を続けています。その理由を考えると、自ずと理念に答えを求めるしかないのだろうと思います。
理念に基づき自分なりに部活での存在意義を発見して、組織の為に個人が出来ることを最大限やりきる。理念は例え目標が揺らぎ、或いは無くなったとしても変わらず根底にあり続ける。だからこそ希望の灯を消すことなく、全員が同じ方向を向き毎日Updateし続けられている。この絶望的な状況により、そのような理念の存在意義を肌で感じることができました。
補足すると、この考えは甲子園の中止が決まったとき特に強くなりました。ニュース映像をみると、どの監督も「甲子園が全てじゃない」と部員たちに説いていました。この言葉は活動の根底に理念が存在し、組織と個人に浸透していないと理解できない言葉です。理念がないと目標が喪失したときに自分たちの存在意義が一切無くなってしまいます。理念なき目標はそれを達成し得なかった(または目標が喪失した)とき自分たちの積み重ねた過去をも否定することになりかねません。東大ラグビー部には100年もの間脈々と受け継がれる理念があるからこそ困難にも立ち向かえているのだと感じます。
書き始めたら長々と書いてしまいましたが、コロナにより部が窮地に立たされたことで、従来見逃されがちであった理念の存在意義を見直すきっかけになりました。その意味で、この先も連綿と続く東大ラグビー部という組織において非常に有意義な期間だったと感じています。むしろ、この歴史的経験を通じて、組織の存在意義や理念についてもう一度考え直すべきかもしれません。
また、話は変わりますが個人としても非常に有意義な時間を過ごせました。従来のラグビー漬けの生活から離れることで自分の興味や将来について探求できました。特に就職活動を通じ自分を分析し、自己の存在を言語化する中で自分を深く理解できました。
さらに、時間的・体力的余裕が出来たため、新しいことに色々挑戦するチャンスもありました。免許取得以来機会のなかった車の運転を何度も行いました。また、Queenや乃木坂の曲をピアノで計10曲ほどカバーしてみたり、長年やろうとしつつも手を出せなかったギターを購入して始めたりしました。この期間は暇さえあれば音楽に触れていました。今までラグビーに注いでいた熱が一気に音楽に流れ込みました。熱は音楽のみならず隠れていた知的好奇心にも広がりました。この3ヶ月で新書、文庫、専門書など30冊以上を読み、授業での学び以外に英語やドイツ語なども熱を入れて学習しました。トレーニングについては、自宅と公園でしか出来ないので、従来疎かにしがちだったディップスや懸垂などの自重トレーニングの重要性を発見しました。また、幼稚園入園以来最長の2ヶ月という外出予定の無い長期間を家族や可愛いペットと過ごすことが出来ました。
このように、これからの人生で二度と無いほどの自由な時間を自己の再発見と、新たな挑戦・学びにあてることができました。
この歴史的局面において、組織としても個人としても二度と経験出来ないような有意義な時間を過ごすことが出来たと思います。東大ラグビー部としては、これら組織/個人の経験が再開後に100%の力を出す糧になると信じて、部員全員で今出来ることに全力で挑み続けます。
リレー日記で初めてこれほどの長文を書いたので少し恥ずかしいです。次はランニング記録アプリの新たな使い方を示してくれた3年の杉浦に回します。
2020年は誰も予測し得なかった年になっています。新型コロナウイルスの世界的な広がり、BLM運動、オリンピック延期のみならず、世界的な蝗害やオーストラリアの森林火災などの大規模な環境問題もありました。特にコロナウイルスとBLM運動に関しては、世界史上で現代と位置付けられていた我々の生活様式や価値観を転換させうる力となっています。例えば、世界中で働き方が変わりつつある。それに伴い都市部一極化解消に向けた動きもちらほらと見られるようになった。移動を伴うグローバル化の波に陰りが見える。産業化の環境への悪影響が浮き彫りになる。フィンランドが経済と安全は二項対立で処理できない問題であることを体現する。アメリカでは国民国家の矛盾が表面化している。暴力装置が機能不全に陥り、ウェーバー以降の主権国家の前提に綻びが見える。我々はまさに歴史の転換点にいるのだという実感を情報の海の中でひしひしと感じます。
これらのことはメディアを通じニュースとして知るところとなっていますが、我々学生の身としても肌で様々なことを感じ、考えさせられました。
例えば授業でも多くの変化がありました。私は今学期の授業の殆どは愛知の実家で受けました。試験の形式についてはまだ具体的に公表されていませんがこれで単位取得、学位授与が認められるならば大学の所在地付近に住み、キャンパスに通う意味の重要な部分が否定されます。日本全国どこからでも同等の教育にアクセス出来ることになるからです。拡大して考えると、海外の大学教育へのアクセスも従来と比べ非常に容易になる可能性もあります。このように、特に実家が愛知県で東京で一人暮らしをしてきた私にとって、"東大生である"ことや"大学で学ぶ"ことはどういうことなのかについて深く考えさせられました。
部活についてはここに書き切れないほど、特に4年生は自らの存在や組織の存在について観想したと思います。そのような中で私は、この期間は東大ラグビー部の"理念"を見つめ直すいい機会だったと感じます。
4年生は今シーズン始動前、何度も何度もミーティングを重ねました。その中で何度も議論の種になったのは"目標"と"理念"でした。
目標は結果ベースの具体的、定量的な指針であり、今年度は入れ替え戦出場を掲げました。これはその具体性からイメージし易く、それぞれの意見の相違こそあれ、最終的に合意を導くまでの筋道は全員が共有できるものでした。
それに対して理念は、抽象的で長期的な指針であって定義すらも曖昧で、それを言語化する必要性に疑問を持つ者もおり議論は難航しました。議論に際しこれまでの東大ラグビー部約100年の歴史を振り返り、青山監督やOBの方々から貴重なお話をお聞きし、外部の方々の力もお借りしながら思索を深めました。そして自分たちが何故東大ラグビー部に所属しているのか、東大ラグビー部という組織は何の為に存在しているのかという問いを立て、我々なりに不器用ながらなんとか答えを出しました。このホームページの「AboutUs」から「理念」のページに飛べますが、そこには我々が時間をかけて言語化した東大ラグビー部の理念が書かれています。勿論これはこの先何百年と続いていくであろう東大ラグビー部の歴史の刹那における解釈に過ぎず、これから何度も修正されていくことを願っています。
しかし、理念を考えるなどといい、自分たちなりに格好の良い言葉を紡ぎはしたけれども、その意味を心の底から考え、理解出来ていた人は誰一人いなかったのではないかと思います。それが今、幸か不幸か我々の置かれている状況によってある種強制的に、考えざるを得ない事態に置かれました。当たり前過ぎてその重要性にすら気がつかなかった、「部員が集まって練習する」ということが禁止されました。存在が当たり前だった対抗戦、入れ替え戦が本当に実施されるのかも定かではありません。目標が、予想だにしなかった要因により根本から否定されうるという危うい状況に立たされています。それでもなお、私たちは誰一人辞めることなく東大ラグビー部に所属し続けており、いつになるか分からない再会の日を夢見てトレーニングや部員間の交流を続けています。その理由を考えると、自ずと理念に答えを求めるしかないのだろうと思います。
理念に基づき自分なりに部活での存在意義を発見して、組織の為に個人が出来ることを最大限やりきる。理念は例え目標が揺らぎ、或いは無くなったとしても変わらず根底にあり続ける。だからこそ希望の灯を消すことなく、全員が同じ方向を向き毎日Updateし続けられている。この絶望的な状況により、そのような理念の存在意義を肌で感じることができました。
補足すると、この考えは甲子園の中止が決まったとき特に強くなりました。ニュース映像をみると、どの監督も「甲子園が全てじゃない」と部員たちに説いていました。この言葉は活動の根底に理念が存在し、組織と個人に浸透していないと理解できない言葉です。理念がないと目標が喪失したときに自分たちの存在意義が一切無くなってしまいます。理念なき目標はそれを達成し得なかった(または目標が喪失した)とき自分たちの積み重ねた過去をも否定することになりかねません。東大ラグビー部には100年もの間脈々と受け継がれる理念があるからこそ困難にも立ち向かえているのだと感じます。
書き始めたら長々と書いてしまいましたが、コロナにより部が窮地に立たされたことで、従来見逃されがちであった理念の存在意義を見直すきっかけになりました。その意味で、この先も連綿と続く東大ラグビー部という組織において非常に有意義な期間だったと感じています。むしろ、この歴史的経験を通じて、組織の存在意義や理念についてもう一度考え直すべきかもしれません。
また、話は変わりますが個人としても非常に有意義な時間を過ごせました。従来のラグビー漬けの生活から離れることで自分の興味や将来について探求できました。特に就職活動を通じ自分を分析し、自己の存在を言語化する中で自分を深く理解できました。
さらに、時間的・体力的余裕が出来たため、新しいことに色々挑戦するチャンスもありました。免許取得以来機会のなかった車の運転を何度も行いました。また、Queenや乃木坂の曲をピアノで計10曲ほどカバーしてみたり、長年やろうとしつつも手を出せなかったギターを購入して始めたりしました。この期間は暇さえあれば音楽に触れていました。今までラグビーに注いでいた熱が一気に音楽に流れ込みました。熱は音楽のみならず隠れていた知的好奇心にも広がりました。この3ヶ月で新書、文庫、専門書など30冊以上を読み、授業での学び以外に英語やドイツ語なども熱を入れて学習しました。トレーニングについては、自宅と公園でしか出来ないので、従来疎かにしがちだったディップスや懸垂などの自重トレーニングの重要性を発見しました。また、幼稚園入園以来最長の2ヶ月という外出予定の無い長期間を家族や可愛いペットと過ごすことが出来ました。
このように、これからの人生で二度と無いほどの自由な時間を自己の再発見と、新たな挑戦・学びにあてることができました。
この歴史的局面において、組織としても個人としても二度と経験出来ないような有意義な時間を過ごすことが出来たと思います。東大ラグビー部としては、これら組織/個人の経験が再開後に100%の力を出す糧になると信じて、部員全員で今出来ることに全力で挑み続けます。
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