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ラグビー部リレー日記
綾織なす華やかなりし日々
投稿日時:2022/12/20(火) 17:19
みんなの兄貴、三方からバトンを受け取りました、4年スタッフ長の谷田です。私も三方を兄貴として慕っている一人で、1年生の頃から仲良くさせてもらっていましたが、その温厚さと冷静さを兼ね備えた人柄に何度も救われてきました。人生をかけた相談をさせてもらったこともありますね。
1年生の頃ラグビーなんか嫌いだとずっと言っていましたが、多くの人が三方なら4年間やり遂げるだろうと思っていたことでしょう。苦しい思いを何度も乗り越えて、東大ラグビー部の第一線で輝き続けてきた彼を心から尊敬しています。奇遇にも、就職しても近くにいるみたいなので今後ともぜひよろしくしてもらえると嬉しいです。
今になって気づいた感情と、毎日噛み締めていた感情がある。
その2つは時に相反するものであるし、時に共存するものである。両方が、今の私を形作っているこの上なく大切なものだ。
4年間、必死だったな。
最後の対抗戦を終え、振り返るとそう思う。
勝ちたかった。
春シーズンは、不安を感じていた。1年生の時は初めての対抗戦で正直右も左もよくわかっていなかったけれど、2,3年生の時は今年こそ勝てるのだと信じていたのに負けてしまったから、結局どうしたら東大ラグビー部は勝てるのか、今年のチームはこれまでのチームを上回るどんな要素を作っていけるのか、わからなかった。3年時も同じスタッフ長という立場で精一杯やったつもりだったので、さらに何をすればいいのかわからなかった。4年になってそれはどうなんだという焦りもあったし、かといって他の同期のみんなが具体的にどうやって問題を克服しようとしているのかもよく見えなかったから、道がないようで不安だった。でもきつい練習やトレーニングを乗り越えて体が大きくなっていく選手たちを見て、同期たちが最高学年として少しずつ成長していくのを見て、自分も持ちうる限りの時間を使ってやるべきことをやって。春の4連敗はあれどその後勝利が続いて少しは希望を持つようになった。
夏はとにかく目まぐるしい日々だった。日々ハードに練習する皆の傍、合宿の準備に明け暮れ、下見しに山梨まで行ったりなんかもした。本当に部活だらけの日々で信じられないほど時間が早く過ぎた。合宿は、試合結果が芳しくないまま中止になってしまったけれど、濃い時間をたくさん一緒に過ごす中でいい感じにチームビルドされていると感じていたから結構前向きだった。対抗戦開幕時点では、今年は目標を達成するのだと信じていた。
上智戦の前の日は、なぜか涙が止まらなくて眠れなかった。みんなのこれまで努力が報われますように、ついでに私の努力も報われますようにと強く願った。辛勝して安堵の涙も流した。
でも一橋に負けた。4年間で一番悔しい敗戦だった。何もかも投げ出したくなる結果だった。大痛手の敗戦に沈むチーム。どう立ち直るか模索しなければならない大事な1週間だった。残りの試合で全勝すると信じるしかなかった。誰も怪我しませんようにと思いを込めて、いつにも増してケアマッサージ等怪我管理に打ち込んだ。マインドフルネスを高めるべく、チームオペレーションにもさらに気を使った。しかし、武蔵には勝てたものの成蹊明学と勝てなかった。そこからは何が足りなかったのか思いを巡らせる日々だった。だが正直まだ結果を受け入れ切れていないし、受け入れられる日はこないかもしれない。入替戦で1部に昇格し歓喜に沸く成蹊を目の当たりにして、あんなに悔しいとは。
勝利のために、スタッフとしてできることはなんでもやってきた。ラグビー部で起こっていることを理解すべくできるだけ多くのセクションに所属した。ケアの資格やアスリートフードマイスター取得など専門的技能の勉強にも勤しんだ。チームのオペレーションに深く関わることになった今年は、大事な選手たちが少しでもラグビーに集中できるよう最大限に気を使ってきたつもりだ。首脳陣との連携から、日々の小さなことまで。スタッフ組織でも、運営と調整に文字通り心を砕いてきた。
15人という、長い東大ラグビー部の歴史の中でも随一のスタッフの豊富さそしてそれぞれの熱心で的確な仕事は、今年のチームの強化を強く下支えしていたと改めてはっきりと言える。東大ラグビー部という組織は著しく進化した。私がスタッフ長を務めて全体が少し見えるようになったこの2年間だけでも、その中で私が行ったものだけでも、仕事の量は激増したし質も向上した。組織として強くなっていると肌身で感じていたし、それは紛れもない事実だ。
一方で、ずっと不安だった。
もっと何かできるのではないか。スタッフ組織はもっとよりよくできるのではないか。チームやスタッフがバラバラに向いているのではないか。選手の要望を汲み取れていないのではないか。私の仕事は形に残らないものが多い中毎日判断の連続で、選んだ答えは正しく結果に結びついているのか。
そんな不安はあれど、色々相談してもらえる立場として弱音を吐かないように意識していたし、そもそも選手を見ればしんどいと感じる余地すらなかった。私がそんなふうに気を抜いていては部の運営に支障が出るという責任感もあった。練習中もそれ以外も、できることを探し続けるのが私の仕事だった。だから、毎日淡々とやるべきことをして、いつでも頼ってもらえるようになんというかカッコつけるようにもしていたのだけれど、力不足だったのかもしれないな。いろんなところでもっといいやり方があったのだろう。
また、一旦自分が不安で必死であるということに気づいてしまうとラグビー部にマイナスな気持ちを持ってしまいそうで、それが嫌で気づかないようにしていた部分もあった。ちゃんと自分の不安に向き合っていればもっと気づけた問題があったかもしれない。実際今振り返れば、スルーしてきてしまった問題もある。私は強くあるためにそうしていたのだけれど、むしろそこに弱さがあったと今になって思う。
4年間、幸せだった。
これが毎日感じていた感情だ。
4年前、ラグビーというスポーツの精神性が好きで、東大ラグビー部が背負っている伝統や充実した環境、規模感、雰囲気、そして対抗戦A昇格という夢に魅了されて、入部した。
何事も経験してみることが大事だという考えもあって、高校までで経験してきた「選手」ではなくスタッフを選択した。でも普段は考えないようにしていても、高校までの自分を知る人たちに「『選手』をして欲しかった」と言われる度、引退の時に「選手」になるべきだったと後悔したらどうしようと不安に思っていた。正直にいうと、女子部がなく自分がやるという選択肢から最も遠いからこそラグビー部を選んだのもある。実際「選手」を選んでいたらどうなっていたかなと思いを馳せたことも何度か。
そんな機会費用もあり、大事な大学生活の4年間を捧げるのだから、その対象は自分にとって近しく大事な人々であって欲しいと願い、4年間選手とのコミュニケーションを欠かさないようにしてきた。選手の性格・努力・悩みなど、理解するよう努力してきたつもりだ。勝利に貢献する上でもその理解が役立つと信じていた。同じチームの一員として対等に、選手に向かい合いたかった。
しかし理解しようとすればするほど、私の”players first”の考えも邪魔して、どこまで行っても選手が味わっているラグビーの苦しみを共有できない苦しさを感じていた。ウエイトやBBCを乗り越えるみんなをみて、メンツ発表時の緊張した面持ちのみんなをみて、試合に勝って負けて感情をあらわにするみんなを見て、どこか置いていかれるような気持ちがあったのは確かだ。今まで書いてきたように真の最高学年としての1年を振り返ってみても、やはり頭に浮かぶのはスタッフとして見るチームの文化的なことが多く、選手との感覚の乖離があるかもしれない。スタッフが、選手はスタッフの仕事を理解していないとぼやくことがあるけれど、スタッフの選手たちに対する理解のなさに辟易した選手もいたのだろう。ラストリレー日記を読めば、初めて知る同期たちの苦悩があり、新たに知る一面がある。最後まで自分の未熟さを感じている。彼らに寄り添い切れていなかった。独り善がりだったのかもしれない。
でもたとえ時に突き放されようとも、私が関わってきた東大ラグビー部の一人一人を、一貫して毎日を捧げられるだけの大好きで大事な存在として位置付けてきた。だから必死になることができたし、最後までやり遂げることができた。朝起きたらまずラグビー部のことを考えて、1日の中でラグビー部とたくさんのやりとりをして、夜は明日のラグビー部のことを考える。1年生の頃青山先生にいただいてから書きためてきたラグビーノート、日記、写真フォルダ。どこをみてもラグビー部ばかり。ここまで没頭できたことも、幸せに思う一つの理由だ。「スタッフに結果で返せなくて申し訳ない」と見聞きすることがあるけれど、私だって結果ももちろんとても大事なのだけれど、それはみんなが大事にしたいと思える存在でいてくれたからこそであり、むしろいただいてきたばかりだと言いたい気持ちもある。
思い返してみれば辛いこともあったけれど、それに気づかないで走り抜けられるほどやりがいのある日々だった。今心からそう思えてよかった。心が震える瞬間に何度も立ち会わせてもらった。ラグビーに没頭するみんなは美しかった。4年間、支えさせてくれてありがとう。みんなの辛く楽しいラグビー生活を少しでも支えられていれば幸せです。
2月のリレー日記に対しては、この文章をもって返答できそうです。
最後になりましたが、改めて感謝の思いを。
熱い想いと期待を寄せて支援してくださっている、OB・OG、青山先生、コーチ陣の皆様。皆様のサポートのおかげで活動できていることをいつも身に染みて感じておりました。ここ数年は例年にも増してご協力いただいております。チームとして結果で恩返しする事は叶いませんでしたが、私個人にとっては皆様のおかげで学びの多い大切な4年間になりました。この場を借りて、心から御礼申し上げます。
同期のみんな。当たり前に一緒にいられる場所を作ってくれてありがとう。下級生の頃はラグビーなんか嫌いだという人の方が多かったような印象までありますが、それでも最後まで努力を続け、かっこいい4年生になったみんなをとても尊敬しています。そしてそんなみんなと時間と思い出、努力を共にできたことを誇りに思います。4年間ありがとう。今後も仲良くしてもらえると嬉しいです。
スタッフのみんな。色々要求して無理させてしまったこともたくさんあると思います。ごめんね。非合理的で頼りない私を温かく見守ってくれてありがとう。どんな時も共に仕事をしてきて、いつも刺激をもらっていました。後輩のみんなは、来年以降大変になると思いますが、ラグビー部を本当に熱く思う優秀な皆さんなら、きっともっと東大ラグビー部を進化させられると思います。最初は初々しくて可愛い後輩だったのが、たくさん努力して成長していく姿を見て今はとても頼もしく思っています。とはいえ可愛い後輩には変わりないので、卒部しても相手してください。選手たちと協力して頑張ってね。
後輩のみんな。目標達成に向けて無茶を繰り返す私たちについてきてくれてありがとう。今はまだ先の見えない練習ばかりで、辛いことがあまりにも多いかもしれません。でも努力家のみんななら必ず入替戦出場を果たしてくれると信じています。そして後輩スタッフはじめ応援してくれる人たちのためにも、それに値するよう心身共に自己研鑽を続けて欲しいです。最終学年までそばで支えることができないことが心から残念ですが、試合で応援できるのを楽しみにしています。ご飯いつでも行きましょう。
先輩の皆さん。野村組、藤井組、杉浦組それぞれが大好きなチームでした。たくさんよくしていただいた上に、ずっと進むべき道を示していただいていました。大好きなその背中を懸命に追いかけて少しでも支えられた経験は私にとって本当に大切でした。ご飯のお誘いいつでも待ってます。
両親へ。何かをため込んでは直ぐに「明日帰る」と言って帰省する私を温かく受け入れてくれたり、遠くからでもいろんな手助けをしてくれたりと、いつも誰よりも私を応援してくれていることを強く感じています。時間をかけて恩返ししていきます。いつもありがとう。
最後のリレー日記まで長くなってしまいました。自分が部活を通して考えていたことや引退間近のこの気持ちをせっかくなので素直に綴っておきたいと思い、僭越ながらリレー日記にさせていただきました。ここまでお読みいただきありがとうございました。
今年の残りの試合はついに京大戦だけになりました。昨年の秩父宮での東大100周年記念試合、今年のエコパでの京大100周年記念試合を両方経験させていただけるのもまた幸せなことです。先月静岡まで下見に行って一足先に会場を見せていただきました。あんなに素敵なスタジアムでみんながラグビーを楽しむ姿を見るのが本当に待ち切れません。楽しんで京大に勝ちましょう。
次は、國枝組主務の廣瀬に渡します。廣瀬とは今年、二人三脚のような形でいろんな連携をとってきたので、ずっとそばで彼の努力を見てきました。彼の責任感の強さと東大ラグビー部への想いがチームの大黒柱の一本となったのは言うまでもないことですが、今年はイレギュラーで大変なことが本当に多かったです。それを選手との両立というあまりにも厳しい環境の中でやり遂げた廣瀬に、心から感謝しています。4年間お疲れ様、ゆっくり休みましょう。
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