ラグビー部リレー日記

夢見草

投稿日時:2018/12/14(金) 20:09

最もストイックにトレーニングを続け、フィジカルリーダーとしてみんなの模範になり続けた藤平からバトンをもらいました。4年前川です。
一生懸命書いたので最後まで読んでいただければ幸いです。



ノーサイドの瞬間、俯くスイカの男たちを駒場の桜の木が寂しそうに見下ろしていた。




祭の浮泛の中行われた対抗戦最終戦、部員一人一人の心の何処かに慢心があったのかもしれない。



あの日ほど悔恨に暮れた日はあっただろうか。掴みかけた5勝が紅涙とともに指の間からこぼれ落ちたあとの手底の残滓の軽さに、虚しさを覚えた。目標の4勝を達成できた学習院戦よりもずっとずっと成城戦が重くのしかかる。


あの日から何度も夢に出てきた。多分一生忘れないだろう。勝ったからといって何かが変わるわけではなかった。入替戦に行けるわけではなかった。しかし、届きそうで届かなかったからこそ、あの一勝が不可欠な貴石だったように思える。


桜は刹那に散りゆく。その「わび・さび」の中に日本人は美を見出す。古来より日本人はいつも卑陋の勝ちよりも廉潔な負けを嗜好してきた。武士道では現世に執着せず義のために命を捧げることをよしとするが、初夏がくればその輝きを潔く捨てる桜は武士道に通じ、日本人のこころに深く根付いている。


連環の時間の中で、学生スポーツにも毎年必ず終わりがやって来る。その純潔さ、取り戻せない青春の儚さが学生スポーツを魅力的なものにする。日本の学生スポーツもまた、桜に通ずる。


いま想うと、成城戦は石川組を最も美しく輝かせたのかもしれない。
今年の東大ラグビーの充実が、満開の桜となって咲き誇ったからこそ、散りゆく名残惜しさに日本人は絶佳の美を見出す。桜とはそういうものであると思う。


最終戦の花吹雪は僕らに多くの示唆を与えてくれた。届きそうで届かなかった大団円が、人生に豊饒な輝きをもたらす。



同期のみんなありがとう。陳腐な言葉で飾れない。初夏がくれば、青い春の花霞を遠くに眺めやりながら、一献傾けようじゃないか。



残花の9日、僕らの春はまだ続く。




次は戦術班として一緒に今年のラグビーについて考え、Xファクターとしてフィールドでも大活躍をした三浦に回そうと思います。






 

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