ブログ 棚橋 春喜さんが書いた記事

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赫奕たる日輪[ラグビー部リレー日記]

 written by 棚橋 春喜投稿日時:2016/12/23(金) 19:46

我らが副将津川より、今年最後のバトンを受け取りました、四年主将の棚橋です。
今年の総括は会報でさせていただくので、雑感のほどをここに残したいと思います。

私はこの季節、まどろみの中にある街を駆け抜けて、駅まで自転車を飛ばすのが好きだ。吹く風が頬に冷たいのも眠気覚ましにちょうどいい。暁闇は来る日輪を待ちわびている。
グラウンドにつく頃には、東が赤を帯びて、溶け始めた霜が芝の穂先で光っている。木々の間から差し込まれた陽光がグラウンドに数条の線を引く。そんな早朝のグラウンドが、私は好きだ。
寒さに手をこすりながら、硬くなった身体を伸ばす。ひなたはほのかに暖かい。今日も練習が始まる。

気づけば、四年間朝の駒場に通ってきた。雨もあれば雪が積もった時もあった。特に記憶に新しいこの一年は朝が毎日めぐるのが嬉しかった。
津川は私が悩んでいたといったがその何倍も楽しませてもらったと思う。結局ラグビーは楽しい。毎日、ラグビーができることに感謝である。
嬉しい日も、辛い日も同様に天体が周り、次の日のグラウンドに赴くことになる。一橋戦の先の見えぬ絶望の後も、成城戦の震える歓喜の後も、日は昇った。
日が昇る以上、前進を続けなければならない。時間の経過を傍観するのことは愚者の行いだ。青春を楕円に燃やすと決めたのならば、覚悟が必要だ。

自分は、主将として何ができたか。シーズン当初宣言した通り、体を張ることが私のレゾンデートルだ。それは全うできた。
しかし、目標とした勝利に手が届かなかった。結果に葛藤や懊悩も芽生えた。それでも、日が昇るのである。背を焦がされながら、前へ進まねばならない。
巡りくる毎日が、積み重ねた練習が、最後のこの一戦に私を到達させた。学生として迎える最後の一戦は感傷もあるが、何より楽しみでならない。
私は人前で泣くことが嫌いだ。歔欷すらも厭わしい。それでも勝って泣けるなら、それもありかなと思えてくる。
私が全力で、本気でできる最後のラグビーだ。黄檗のグラウンドにも、朝が来るのが待ち遠しい。

明日もまた、日が昇る。熱と光を、行く先に注いでくれ。

シンビン[ラグビー部リレー日記]

 written by 棚橋 春喜投稿日時:2016/10/02(日) 15:11

竹村から受け継ぎました、四年棚橋です。
先日の明治学院大学戦について書きます。


生まれて、初めて、シンビンを食らった。
後半、28分ごろ、自陣ゴール前。ラックからのハーフ持ち出しを狙った。早過ぎた。
点差が開かず、タイトな試合展開。後半になって押されだした。徐々にゲインされるディフェンスラインがもどかしかった。気持ちばかりが先に出て、焦燥は長い笛を呼んだ。

椅子の冷たい感触と、トライを取られた落胆の声と、無力に仰ぎ見た晩夏の空。
一番辛い瞬間にフィールドの外にいる。何が主将だろうか。
ジャージの汗が乾き、急速に体が冷えていくのを感じた。

10分間、フィールドの外から試合を見た。紛れもなく、それは応援する部員の視座で、こんなにも勝ちたい試合に、こんなにも無力な自分がいる。
外から、檄を飛ばすことしかできない者は、これほどもどかしいものか。

試合の後、幾度か謝罪を述べた、最後にもう謝らないと言った。
お前のせいで負けたと謗られても、傲岸だと罵られても構わない。

せめて、主将であるなら、前を向かねばならない。
人が何を言おうとその信念は曲げたくない。
もう二度としないと顔を上げるのが必要だと信じる。


次は写真をたくさん撮ってくれる三年マネージャー壇辻に回します。

父よ[ラグビー部リレー日記]

 written by 棚橋 春喜投稿日時:2016/06/09(木) 22:06

ウェイトペアながら、けがの関係で一緒にウェイトできていない小寺よりバトンを受け取りました、四年棚橋が今回のリレー日記を担当します。


父の日も近い今日、ある一文を思いだした。

「私の知らない父と、父の知らない私が、坂の途中ですれ違う」

多分、焼酎のCMだったと思う。
フロイト曰く、男児にとって父は対抗すべき壁である。
ギリシア悲劇、オイディプスも父の弑逆をもってして王位を簒奪せしめた。

私は若い時分の父を知らない。父も今の私をよくは知らない。その交差路に楕円球が転がっている。
幼き日、小さな手に楕円球を握らせたのは父ではなかったか。
父の見えぬ背を越えよ。ラグビーに若さを燃やすことで、私は父を越えうるだろうか。


次は我が部のラウドボイスシンガー二年石川悠太君にバトンを回します。

三度目[ラグビー部リレー日記]

 written by 棚橋 春喜投稿日時:2015/04/20(月) 16:56

同期の井上からバトンを受け取りました、三年棚橋春喜です。
このたびは更新が遅くなり申し訳ありません。
このごろ思うところについて書かせていただきます。

泰西のいにしえ。ギリシアの地において、偉大なる知の先人たちは『時間』の概念に二つの名を与えた。
 

クロノスとカイロス
死にゆく者の時間と永遠なる神々の時間
移ろいゆく不可逆の時間と巡り繰り返す時間
 

前者は直線の時間である。時は奔流のように止めどなく流れ、決して戻ることはない。その中で人は、赤子から青年に、青年から成人に、そいて老いとともに死に近づいていく。
後者は円環を描く。天体の円運動がもたらす終わりのない循環である。天球を太陽と月が一巡りすることで一日となり、それが365回訪れると季節がめぐる。昼と夜、春夏秋冬、月の満ち欠けが絶え間なく繰り返し、いずれまた同じ場所に戻ってくる。
我々を取り巻く時間はこの二つの様相をもち、その中で我々は生きている。
 

さて、この二つの時間は私のラグビーとともにある生活にいかなる解釈を与えるか。
日々は練習の繰り返しである。日が登る度駒場のグラウンドでボールを追う。何度もスクラムを組み、何度も走り、何度もバーベルを上げる。そして毎日繰り返す。
日々の積み重ねは年月を経る。私がこの生活の循環の中に身をおいて三度目の春を迎えようとしている。季節が巡ることは試合が巡りくることになる。1年生の時分、大敗した防衛大戦がまたやってくる。2年生の頃、歓喜に震えた九州大戦が今年もひかえている。記憶の中にある対戦相手が、グラウンドが一年の空白をおいてまた訪れる。
 

ラグビー部における生活は、毎日・毎年の繰り返し、つまりカイロス的時間の中にある。
しかし、私は単調な反復の中に我が身を埋めているわけではない。私という個人は絶えず移り変わるクロノス的時間の中にある。
今日は昨日より強く、激しく、速く。明日は今日より、一歩前へ。息もつかせぬめまぐるしい毎日の繰り返しの中で、経験は、理解は、肉体は成長する。果ても見えぬ無限の時間の直線の上、戦いの中にいるのなら、強くならねばならぬ。
桜は散った。今年も定期戦がやってくる。昨年より大きくなった自分。昨日より強くなった自分。三度目の春は未だ経験したことのない、『三年生としての』春である。
「現在」を全力で闘う他ない。



次は、最近新しい自転車を買った同期の大畑君にまわしたいと思います。

 

筋肉[ラグビー部リレー日記]

 written by 棚橋 春喜投稿日時:2014/03/07(金) 21:01

同期の稲垣からバトンを受け取りました、新二年棚橋です。

2014年度東大ラグビーが始動して、もう一ヶ月がたとうとしている。部員それぞれが、始動当初から個の強さを追求する今年度首脳陣のもと、熱心な筋トレに励んでいる。体を強く、大きくするという単純な目標を立て、日々自らの体と向き合っているとふと思うことがある。そのことについて書いていきたいと思う。

昨年までの私は、正直のところ筋トレが嫌いだった。ラグビーで使う筋肉は、ラグビーでつける。そんないささか詭弁じみた考えの下、練習さえまともにしていればうまくなれる、強くなれると思っていた。
が、対抗戦を終えてみればその努力もかなわぬところに戦うべき敵がいるのだと思い知った。フィジカルが違う。重さが違う。呪詛の言葉のように頭の中で繰り返した言い訳。ならば何をしなければいけないのか、私は知っているはずだった。しかし、年明けから怠惰な日々を送り、すべきことから目を背け続けていたのが冬オフだった。

オフ明け、始動日。首脳陣の説明は簡潔で明瞭だった。個を強くする。だから筋トレをする。そして自信がつく。
二人組みで筋トレをする制度は、懈怠を完全に払拭した。体重は見る見る増えた。鏡に映る姿は心なしか厚みと鋭さを増した。

首脳陣の読みは正しかったと思う。筋トレの成果が明確にパフォーマンスに出てきていない現段階ですら昨年の私とは違うものを内に感じている。それは自信かもしれない。
筋トレは半ば苦役に近い。タックルが決まる高揚感も、グラウンドを駆け抜ける爽快感もバーベルの上げ下げには存在しない。たださびた鉄の臭気をまとって、奥歯をかみ締めて、悲痛な呻きを上げながら、ひたすら自らの体を傷つける。
しかし、その苦役は確実に私の中に蓄積していく。私のあらゆる運動の基盤となる体に少しずつ、されど確かに沈殿していく。大きくなった自分、強くなった自分を見ることは比すこともできぬ精神的高揚を生む。今の自分ならいつか吹き飛ばされたあいつを倒すことができるかもしれない。それは紛れもない自信だ。純度の高い自信は、努力の沈殿を含んだ精神の上澄みにしか醸成されない。その努力こそ、筋トレであるといわざるを得ない。

かつて、ラグビー部でない友人に筋トレの話をしたとき、「それは体を作っているんじゃない。壊しているんだ。」と揶揄された。アルギニンやBCAA、プロテイン、様々な栄養素を薬品で補いながら必死に筋肉繊維を傷つける。自然の摂理からはみ出した体を作ろうとするこの行為は一般から見れば異質だ。しかし、それは自己顕示欲から来るのではなく、純粋な勝利への意志がそうさせるのだと今は胸を張って言おう。普通じゃないことをするには普通じゃない体が必要だ。東大が勝つことは普通じゃないことだ。だから私は嬉々としてこの体を壊すのだ。


最後になりますが、この場を借りて二月の中旬から筋トレのご指導を頂いた、立山先輩に厚く感謝申し上げます。これからもご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。


次は同じ新二年生として熱心に肉体改造に励む梶村君にお願いしたいと思います。
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