ブログ 宮原 健さんが書いた記事

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[ラグビー部リレー日記]

 written by 宮原 健投稿日時:2018/12/21(金) 23:59

 主務としてもスクラム職人としても仕事人ぶりが光った山田からバトンを受けました、副将の宮原です。

 「勝って、泣こう。」

 俺が1年生の時、新歓用の看板に刻まれていた言葉だ。この熱い言葉に惹かれて入部を決意したのを覚えている。

***

 4年生になるにあたり、目的と目標について考えた。
  
 「なぜ東大ラグビー部に所属するのか?」
  
 この問いに向き合い続けるうちに、自分なりの答えを出した。

 「自ら定めた目標を達成するという自己実現をするため」

 この自己実現こそが俺がラグビーをする目的であり、その過程で生じる熱量がラグビーの熱さであり、これを成し遂げたときに勝って泣くことができるのだと理解した。

 俺たちが入部してから一度も果たしていない対抗戦4勝を目標に定め、副将としてチームを目標に導くと誓った。俺は石川のようにチームを俯瞰してうまくマネジメントするようなことはできない。だから目の前のことに全力で取り組むことでリードするしかない。覚悟を持った。

 胸を張って言える。4年生としての1年間は、今までの人生で最も充実していた。

 試合に向けて課題を設定し、練習でそれに取り組み、試合で成果を確認し、また次の試合に向けて新たな課題を設定するというサイクルでどんどん強くなっていくのを感じることができた春シーズン。練習を考えて仕切ったり和田さんの課すハードなトレーニングをこなしたりで精一杯な日々だったが、成長を感じられたから気持ちは前向きだった。東北大・防衛大・九州大に全勝するという結果もついてきて、秋の目標に着実に近づいていると感じた。仲間が誇らしかった。

 だが、夏に大量にけが人が出てしまった。自分も菅平合宿初日に肩を怪我して一時戦線離脱した。春から積み上げてきたものが崩れ落ちていくような気がした。

 この時は一年間で最もリーダーの責任に悩んだ。今年のチームは目標に向かって本当に尊い努力をしてきたから、俺にはリーダーとしてその努力を結果に結びつける義務があった。チームを目標達成に導くことで、皆の努力の正しさを証明しなくてはいけないという使命感を持っていた。だから、大量の怪我でそれが成し遂げられないのではないかと怖くなった。

 しかし。悩みに悩んでから気づいた。悩んだって仕方ないと。変えられない条件を嘆くのではなく、今できる最大の努力をするしかない。限られたメンバーで試合に向けてベストの準備をする。肩が痛かろうがグラウンドに立ったら死ぬ気でタックルに行く。不器用だから目の前のことに必死で取り組むと決めたことを思い出した。やるしかなかった。
 
 そうして必死に戦っているうちに、対抗戦は終わった。4勝3敗。チームは当初の目標を達成した。自ら立てた目標を達成するという自己実現の喜び、目前だった5勝目を掴めなかった悔しさ。決して忘れない。
 
 これからの人生も、熱を持って生きていく。

 目標を設定して、必死で取り組んで、何度失敗しても立ち上がって、達成するために執念を持って勝負し続ける。そうやって生きていく。東大ラグビー部で学んだ生き方だ。そこには熱がある。

 だが、ラグビーを通じて目標に取り組めるのはこれが最後だ。

 京大戦、勝って泣こう。

 次は目標達成へとチームを導いてくれた主将の石川に回します。お前がキャプテンで本当に良かったよ。ありがとう。

名詞化[ラグビー部リレー日記]

 written by 宮原 健投稿日時:2018/10/19(金) 09:05

 13画で紹介するとは何ともセンスのいい岩崎からバトンを受けました、副将の宮原です。

 ある有名な言語表現の研究の話。
 人物を紹介される際、「彼は野球をよく見る」と言われるより、「彼は野球ファンだ」と言われる方が野球好きの度合いはずっと高く評価されるというもの。

 こうした表現の違いは認知に違いを及ぼすだけでなく実際の行動にも影響を及ぼす。
 「今度の選挙で投票することは、あなたにとってどれくらい重要ですか?」と聞かれるより、「今度の選挙で投票者になることは、あなたにとってどれくらい重要ですか?」と聞かれた方が投票する可能性が大幅に高くなる。

 各実験の2つの質問は、内容的には同じことを聞いている。しかし、結果に顕著な差が現れる。なぜか。

 キーワードは「名詞化」だ。名詞化することの効果は、グループアイデンティティー(集団的同一性)を呼び覚ますことだ。「野球ファン」と聞くと、甲子園で六甲おろしを大合唱する群衆を想起する。「投票者になる」と聞くと、政治に参加する市民の一員であることを強く自覚し、投票しなくてはと思える。名詞的に表現すると、集団に所属しているという意識が生まれ、認識が強まり、行動が促される。

 つまり、人は誰しも何かに所属する必要性を感じている。何者かになりたくてもがきながら進んで行く。その轍が人生を表すのだろう。


 今週末には私の人生を決める試合がある。

 
 「一橋大学に勝ったチームの一員になろう」


 
 次は3年生でありながらより良い組織になるにはどうすべきか考え行動してくれる濃野に回します。
 

Cool Runnings[ラグビー部リレー日記]

 written by 宮原 健投稿日時:2018/04/27(金) 14:37

  
♪み・ん・な 驚くかもね ジャマイカ生まれのボブスレーチーム♪

 野村湧メンバーからバトンを受け取りました、4年宮原です。野村くんは現在怪我で練習ができていませんが、そんな中でも外から大きな声で喝を入れて練習を引き締めてくれるありがたい存在です。感謝しています。

 冒頭に記したのは私の大好きな映画の一つ、「クール・ランニング」に登場する歌の一節です。3月29日の下條くんのリレー日記「映画のススメ」に触発されてこんな内容にしてみました。「クール・ランニング」は常夏の国・ジャマイカの若者4人が冬季オリンピックの種目であるボブスレーでメダルを獲得することを目指す、実話を基にした笑いあり感動ありの名作です。

 ジャマイカの気候では本番さながらの寒さを味わうことができません。ボブスレーに使うソリもありません。オリンピックに挑もうとする4人にはこのように次々に困難が立ちはだかります。しかし彼らは冷凍庫に入って寒さに耐える訓練をしたり、バスタブに入って練習したりと工夫して明るく前向きに困難を乗り越えていきます。

  “We’re different. People are always afraid of what’s different.”

 これは劇中の台詞です。
東大ラグビー部には運動能力が高い選手やラグビー経験の長い選手は少なく、学業との両立で時間的制約のある人が多いです。しかし、それを嘆くのではなく、所与の条件のもとでどうすれば目標に近づくことができるかを考えて全力で取り組み続けていくことに価値があり、その先に勝利があると信じています。

 東大のスタイルで、勝って、驚かせよう。
 
 次は、クールなランニングで魅せる三浦に回します。
  

Again and Again[ラグビー部リレー日記]

 written by 宮原 健投稿日時:2017/11/03(金) 20:27

  

 
和寿・翔に続く、さくらい界のニューウェーブの政宏くんからバトンを受け取りました、宮原健です。先週の学習院大学戦について書きます。

 後半残り10分、東大のリードは4点。学習院が東大ゴール前5メートルに張り付いている。序盤に17点を先取されるも、意地で食らいついて何とか手にしたリード。絶対に譲るわけにはいかない。雷による一時中断の後、相手ボールで再開。ゴールラインめがけて突進してくる学習院。突き刺さる東大。わずかに、東大の気迫が勝ったか。タックルを受けた学習院の選手が落球し、東大ボールに。これでなんとか自陣を脱出して学習院陣内に入るも、ここから学習院はキックを使わずにマイボールを継続してトライを取りに来る。絶対にトライさせてはならない。残り時間のない今、それは敗北を示す。双方の誇りをかけた我慢比べが始まった。東大は激しいDFでゲインを許さないが、学習院も必死にボールキープして攻撃を継続する。少しでも綻びが生まれれば必ずそこを突かれてトライまで持っていかれる。我々にできることは、愚直に体を当て、練習してきた攻めのDFをし続けることだけだった。

 長い攻防の果てに、決着。東大の好タックルを受けた相手が反則を犯し、東大はペナルティーキックを獲得。これを沈め3点を加えたところで長い笛。24—17。5節目にして、今季の対抗戦初勝利。体の奥底に熱く震えるものを感じた。

 勝って、泣けた。

 最高の気分だった。ベンチに帰ると試合に出られなかった仲間やスタッフが迎えてくれた。彼らも、泣いていた。それを見てまた涙があふれた。OBの方や友人からもねぎらいの言葉を受けた。ほっとして、また目頭が熱くなった。

 ラグビーと向き合う我々が努力や感謝を示すには勝つのが一番だ。入れ替え戦というまだ見ぬ舞台に立つ夢が開幕4連敗で絶たれた今、目の前の一戦一戦を勝ち取っていくしかない。かっこ悪くたってギリギリだっていいじゃないか。これからだって遅くない。何度でも勝って、何度でも泣こう。

 最後まで読んでくださりありがとうございます。次は、最近「しばむラン」と称される鋭いランニングで沸かせる同期の芝村に回します。


女詐欺師=名将[ラグビー部リレー日記]

 written by 宮原 健投稿日時:2017/04/04(火) 19:39

***
 進学選択を終えた新三年生は1月末に進学先の学部のテストを初めて受けた。これは、そのテストにまつわる話である。

 その女はよく勉強した。周りの者から見ると異常なまでに。多くの部員が冬オフを謳歌するなか、まだテストまで何週間もあるというのに、「やばーい、やばーい」と漏らしながら一日中図書館にこもってひたすら勉強していた。
 テストが近づき、私も図書館で勉強するようになった。昼食時にその女に話を聞くと、睡眠時間を削って勉強しているのに何一つさっぱり分からないとのこと。
 嘘だろうと思い基礎的な事項を尋ねてみたが、本当に全く分かっていないようだった。
 私はさすがに同情した。彼女は高い志を持ち文科三類から経済学部に進み、出席のない授業にも全て出席して板書を取り続け、長きにわたって自分を追い込んでテスト勉強をしているというのにこれはさすがに哀れだ…

 そして迎えたテスト1日目。1つめの科目はミクロ経済学。例年より難化しており私は動揺したが、それなりに解けたので単位は来たと確信できる出来だった。
 教室を出ると彼女に会った。
 「どうだった?」と聞かれたので、
 「そこそこ出来た」と答え、彼女の出来栄えを聞き返すと、
 「全く出来なかった…。わからなすぎて答案をほとんど書いてないから単位が来るわけないわ…。」と青い顔。しまいには涙を浮かべる始末。
 
 その後も多くの科目で失敗したという彼女。最低でも3科目は落としたとへこんでいたので、ふざけて「3科目落としてなかったら焼肉おごって」と言うと、「絶対落としてるからいいよ」と返した。これほど言うということは本当に出来なかったのだろうと思い、またしても同情してしまった。

 1ヶ月後、成績発表。結局私はパッとしない成績だった。まあ、最初のテストだし、こんなところか。
 一方、彼女。90点以上の「優上」を連発、涙を流したミクロ経済学も80点以上の「優」であり、同期の経済学部の中でぶっちぎりに優秀な成績であった。

 私は呆然としてしまった。全く出来なかったなんて大ウソだったのだ。騙された。東大の女の人ってのはこわいなあと思った。それから、彼女とはしばらく距離を置くことにした。
***
 
 最近笑顔が弾ける後輩マネージャーのあや夏ちゃんからバトンを受け取りました、3年ロックの宮原健です。
 
 上記の事件に話を戻します。結果「優」を取ったのだから、「全く出来なかった」という彼女の発言は大ウソだったのだと、当時の私は思いました。
 しかし、最近、彼女は本当に「全く出来なかった」と感じたのではないかと思うようになりました。
 
 つまり、血のにじむ努力を重ねて万全の準備をしたにもかかわらず、本番では悔し涙を流すような「全く出来なかった」手応えに終わった。
 それでも、準備がとても良かったので「優」を取ることができたのです。

 このように思考を転換させた時、とある名将の言葉が思い出されました。ヤマハ発動機ジュビロの監督の清宮克幸氏の言葉です。
 昨年、ヤマハはサントリーと優勝争いをしていました。直接対決に際し、清宮氏は「我々の80%の力が出せればサントリーに勝てるように準備した」と言っていました。

 ラグビーは人間がするものですから、常に100%が出せるとは限りません。様々な条件により充分に力を発揮できないということは誰もが味わったことのある経験です。
 しかし、80%の力が出せれば OKという準備をしていれば、少しくらいうまくいかなくても大丈夫です。例の彼女と同じですね。

 例年、この部で「100%の力を出せれば勝てる」といった言葉をよく聞きますが、これは「100%の力が出せなければ負ける」ということでしょう。
 女詐欺師と名将のように、少しくらいうまくいかなくてもしっかり結果を残せる準備をするというスタンスが大事だと思います。

 さて、ラグビー好きな方なら気付いているかと思いますが、ヤマハはサントリーとの直接対決に敗れ、優勝を逃しました。清宮氏は、60%の力しか出せなかったと言っていました。
 やはり、勝負は難しいものですね。


 駄文を長々と失礼しました。次は、銀座に入り浸る文剛英に回します。
 
 
 
 
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